宗澤岳史氏
株式会社ソシオテック研究所
開発グループ ソーシャルストライクチーム リサーチャー
臨床心理士。早稲田大学で博士号(Ph.D)を取得。複数の研究機関、大学にて研究員、教員として勤務しながら、病院や企業などでカウンセリング、コーチング、コンサルティングの実務経験を積む。現在、ソシオテック研究所にて人財育成に関わる研究、商品開発、事業企画などに従事。専門は認知行動科学、臨床心理学、人間科学、心理統計学、メンタリティマネジメント。著書に『KONJO 成長と成功の原理原則』など。
「グロースマインドセット(Growth Mindset)」と「フィックストマインドセット(Fixed Mindset)」とはどんなものか。
社員のグロースマインドセットを高めることは企業にとってなぜ重要なのか。独自のマインドセット診断テストの活用による企業へのコンサルティングやコーチングを行っているソシオテック研究所のリサーチャーで、臨床心理学、心理統計学の専門家、宗澤岳史氏に聞いた。
この診断ではマインドセットが「グロース(しなやか)」か、「フィックスト(こちこち)」のどちらであるかを判定するものではなく、それぞれの程度を判定するものです。多くの場合マインドセットは「グロース」か「フィックスト」のどちらが強いかわかりますが、人によっては、どちらも備えていたり、どちらでもないという場合もあります。また、おかれた状況などに応じて変わることもあります。
「グロースマインドセットとフィックストマインドセットは、どちらも人間が当たり前に持っている心的傾向であり、一方だけが優れているということではありません。しかし、今の激しい経営環境の変化のなかで企業が生き残るためには、社員のグロースマインドセットを組織的に高めていく取り組みが必要です。」こう語るのはソシオテック研究所のリサーチャー宗澤岳史氏だ。
二つのマインドセットの最も大きな違いは、「失敗」の捉え方にある。グロースマインドセットを備えている人は、自分の成長を信じているので、失敗を前向きに捉えて次の挑戦に向かうことができる。一方、フィックストマインドセットの人は、たとえ潜在的な能力が高くても、一度失敗したら「自分には無理だ」と諦めがちで、経験を蓄積しにくい。能力があるのに、マインドセットが原因でそれを発揮する機会を失っている社員がいるとすれば、企業としても大きな損失となる。
宗澤氏によれば、マインドセットは年代や性別より、その人が所属する組織の環境に影響されるという。「 当社で35~45歳のホワイトカラーを対象に実施したマインドセットに関する独自調査。こちらによると、グロースマインドセットの傾向が強い人は自社に対し、『自分の夢が実現できる』『会社の方針に共感できる』『上司とのコミュニケーション機会がある』などと答えた人が多くいました。年代・性別と関係なくこの傾向が見られましたので、企業理念や組織風土、あるいは上司の価値観などが、社員のマインドセットに色濃く影響を与えていると考えてよいでしょう」
環境や行動を見直すことで、フィックストマインドセットをグロースマインドセットへと変えることが可能だ。その第一歩は、自分たちのマインドセットに気づくことだと宗澤氏は話す。
「マインドセットは組織風土などと密接に関係しているため、『こちこち』の度合いが強まっていても、自分たちでは気づきにくいもの。外部の目線を取り入れるのが良い方法です」
冒頭で紹介した客観的な診断テストを活用することで、個々の社員のマインドセットも判定でき、またどちらのマインドセットを醸成しやすい組織風土なのか把握する手がかりにもなる。「日本企業では上司の価値観が組織のマインドセットを決定づけてしまうことがあるため、マネジメント層の意識改革も重要です」
もちろん、いきなりマインドセットを変えようとしてもなかなか難しいもの。まずは行動から見直しを図るのが近道だと宗澤氏は指摘する。グロースマインドセットの人たちの行動パターンを実践してもらうことで、マインドセットも徐々に変えられるという。例えば、部下の挑戦や失敗を前向きに捉え、今後の成長を見据えたプロセス評価を取り入れることが、上司のマインドセット醸成にもつながるのだ。
「 人事制度や組織の改革と違い、マインドセットの変革は時間がかからないもの。自分たちのマインドセットを意識しながら、上司とチームメンバーがコミュニケーションや行動規範を見直すと、組織のマインドセットが『グロース』へと一気に変わることがよくあります。ぜひ前向きに取り組んでほしいです」
宗澤岳史氏
株式会社ソシオテック研究所
開発グループ ソーシャルストライクチーム リサーチャー
臨床心理士。早稲田大学で博士号(Ph.D)を取得。複数の研究機関、大学にて研究員、教員として勤務しながら、病院や企業などでカウンセリング、コーチング、コンサルティングの実務経験を積む。現在、ソシオテック研究所にて人財育成に関わる研究、商品開発、事業企画などに従事。専門は認知行動科学、臨床心理学、人間科学、心理統計学、メンタリティマネジメント。著書に『KONJO 成長と成功の原理原則』など。