有期雇用に関する労働契約法が4月に施行されるなど、雇用や労働を取り巻く環境がますます変化することが予測される2013年。企業の経営者や人事部門は、その変化にどのように対応していけばいいのか。
労働や人材などの分野を専門に研究されている東京大学大学院教授の佐藤博樹氏と東洋大学准教授の小島貴子氏に話をうかがいながら、2013年以降に予測される変化を7つのキーワードにまとめてみた。
有期雇用に関する労働契約法が4月に施行されるなど、雇用や労働を取り巻く環境がますます変化することが予測される2013年。企業の経営者や人事部門は、その変化にどのように対応していけばいいのか。
労働や人材などの分野を専門に研究されている東京大学大学院教授の佐藤博樹氏と東洋大学准教授の小島貴子氏に話をうかがいながら、2013年以降に予測される変化を7つのキーワードにまとめてみた。
2013年4月は、厚生年金の支給開始年齢に関する2 つの動きが重なるタイミングにあたる。老齢厚生年金の支給開始は65歳からだが、これまで、60歳から64歳までは「特別支給の老齢厚生年金」が受けられた。「特別支給の老齢厚生年金」は、定額部分と報酬比例部分に分けられるが、定額部分の段階的引き上げが完了し、支給開始が65歳になるのが13年4月。報酬比例部分の段階的引き上げがスタートし、支給年齢が61歳となるのも13年4月である。この引き上げは25年4月に65歳まで引き上げられて完了する(男性の場合)。つまり将来的に、65歳以前には年金が受け取れない仕組みが成立するということだ(図1)。
「年金の支給開始年齢が上がり『長く働かざるを得ない状況になっている』ことと、健康寿命が延び『長く働ける』こと。高齢者雇用の背景には、その2つの事情があります」(佐藤氏)。また同時期に改正高年齢者雇用安定法が施行され、段階的に65歳までの希望者全員を企業は雇用することが義務づけられる。
すでに大手通信会社などはミドルエイジを中心に賃金の上昇を抑え、個人のスキルなどによって賃金を決める施策や、「自由選択定年制」を設けるなどの対策に乗り出しており、こうした動きはさらに広がりそうだ。
働く期間が長くなるということは、働く人に求められる職業能力も、年齢や役割などのステージによって変わっていくということだ。佐藤氏はこう説明する。
「企業が存続していくためには、外部環境の変化に合わせて事業構造を変えていかなければなりません。働く人の業務内容も変化していくということです」
会社側が求める変化と、働く人が望むキャリア。その「すりあわせ」が今後はますます重要になりそうだ。「1年ごとなど上司と部下でキャリアに対して話し合う機会を設けている企業もあると思いますが、それに加えて、たとえば15年ごとのスパンで、37歳、52歳くらいを節目に、会社と個人の間でキャリアに関するビジョンを調整していくといった具体策が考えられます。結果、会社のビジョンと方向性を同じくする人が、その会社で長く働き続ける。同時に、ビジョンが異なる人は、自分のキャリアや希望に最適なところに転職する。今後は、そういった形でのキャリア形成の考え方が浸透し、キャリアの節目節目での転職が促進されるのではないでしょうか」
一方、厳しい環境下にある企業の多くは、ミドル~シニア層が厚くなれば若年者の雇用枠を抑える傾向になる。若年層の採用は企業にとって、将来へ向けた投資という意味を持つ。企業の継続性という点でも、数十年後を見据えた人材確保は欠かせない。高齢者雇用を維持しつつ、いかに若い力を獲得していくか。企業の人事戦略が試される時代に入っている。