VOL.30 特集:キーワードで読み解く2013年の雇用と労働

2013年、雇用と労働の環境はこう変化する

有期雇用に関する労働契約法が4月に施行されるなど、雇用や労働を取り巻く環境がますます変化することが予測される2013年。企業の経営者や人事部門は、その変化にどのように対応していけばいいのか。
労働や人材などの分野を専門に研究されている東京大学大学院教授の佐藤博樹氏と東洋大学准教授の小島貴子氏に話をうかがいながら、2013年以降に予測される変化を7つのキーワードにまとめてみた。

■2012年、労働者の雇用形態は? ■2012年、年代・男女別労働就業者数は?

キーワード3 <ワークライフバランス>仕事と介護の両立が重要なテーマに

ワークライフバランスとは、一般に「仕事と私生活のバランスを取ることで、それぞれが相互補完的に充実するような生き方や働き方」のことを意味するが、これまで企業がワークライフバランスの施策を導入する場合、多くは、仕事と出産・育児の両立に重点が置かれていた。その意味で、施策の主要なターゲットは、20代後半から30代の女性であったと言っていい。その構造が今、大きく変わりつつある。

「今後のワークライフバランスを考えるとき、『仕事と介護の両立支援』にも重点を置く必要があります。これまでも介護の問題がなかったわけではありませんが、2025年には団塊の世代が75歳以上になり、その子ども世代の団塊ジュニアが介護の問題に直面することになります。つまり社内で大きな層を占める人たちが、介護の課題をかかえるようになります」(佐藤氏)

【図1】 要介護者から見た主な介護者の続柄

仕事と出産・育児の両立と、仕事と介護の両立。この2つの間には大きな違いがあると佐藤氏は話す。
「介護については、40代後半以降の全社員が直面する課題で、その多くは、ワークライフバランスを自分のこととして考えてこなかった男性の管理職なども含まれます」

40歳と50歳が介護の情報提供をするタイミング

情報提供のタイミングも異なる。出産や育児をサポートする情報は、妊娠後に提供しても遅くはなかった。しかし介護はある日突然発生する問題である分、事前に情報提供をしておく必要がある。
「情報提供は、介護保険の保険料徴収が始まる40歳のタイミングと、親が70代半ばにさしかかる50 歳になるまでにはすべきことでしょう。会社としてはまず、社員に対するこうした情報提供の機会を設ける工夫をしていくべきです」

伝えるべき内容はそう複雑ではない。
「(1)介護は誰もが直面する問題。介護に関する問題が起きたら会社に相談すること、(2)専門家のアドバイスや介護保険によるサービスを利用して自分は仕事と介護の両立をマネジメントに専念すること、(3)仕事はやめないこと、の3つを伝えれば十分」(佐藤氏)。

【図2】 高齢世代人口の比率
ここがポイント ●仕事と介護の両立が大きな課題となる ●人事部からの情報提供が重要