「世代を時系列で見ていくと、時代時代の空気や世の中の雰囲気が読み取れるんです」と語る原田曜平氏。
マーケッターとして若者を研究する原田氏に、各世代の特徴や働き方の意識について聞いた。
しらけ世代、氷河期世代、さとり世代……。日本では、さまざまな視点とネーミングで「世代」が語られてきた。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーの原田曜平氏は、数多い世代の中でも、「特定の体験をしたかどうかで生まれる世代の断絶」=“時代の節目”に注目する。
その一つが絶好調経済を知るバブル世代と、はじけた後の団塊ジュニアだ。団塊の世代は、戦後教育を受け、年功序列・終身雇用のなかで日本の高度経済成長を支えてきた。その子どもである団塊ジュニアは、日本の好景気を背景に、子どもたちが本格的なマーケティングの対象になった最初の世代だ。
「団塊世代である両親に“勉強すればいい会社に入れる”と言われて受験戦争をくぐり抜けてきたのに、成人するころにバブルが崩壊。超売り手市場だった就職戦線は一変して、氷河期に突入してしまった。話が違う、という不遇感のある世代ですね。でも、景気がいい時代の空気感も、その後のデフレも肌で知っているので、バブル世代とゆとり世代をつなぐ存在にもなれます」
“ゆとり世代”とは一般的にゆとり教育を受けた世代を指すが、2002年から段階的に実施されたため、およそ1987~2004年生まれと幅が広く、ジェネレーションZとも重なる。
二つの世代を読み解くカギであり、「バブルに続く世代断絶になるかも」と原田氏が予測するのが、携帯電話だ。
ゆとり世代の前期は、日本で独自に発達した携帯の普及・進化とともに育った“ガラケー世代”でもある。
「この世代は操作性や画面サイズの問題もあって、携帯内の口コミで情報完結しがち。コミュニティのなかで目立つと嫌われるという意識が強くて、ガツガツした働き方や自己主張は苦手です。部署全員で達成を目指すといったシチュエーションで力を発揮します」
一般に言われるゆとり世代のイメージはガラケー世代が近い。タテ社会よりヨコ社会を好み、周りとの同調志向が強い。
「ガラケーという機能が限定された端末は使いこなせるが、実はPCなどはあまり得意ではないという特徴もあります」
その後、2010年ごろからスマートフォンが本格的に普及。ゆとり世代後期やジェネレーションZは、中高生でスマホデビューしている。
「デジタルネイティブ世代の彼らは、高性能なスマホをいとも簡単に使いこなし、口コミだけに頼らず、必要な情報は“さくさく”検索します。Facebookなどで世界とつながり、Skype会議もパワポを使ったプレゼンも学校で経験していて、高校生で起業する子もいます。きわめて優秀な人間も少なくない、という印象です」
“スマホ世代”が今後どんな仕事観で活躍していくのか、注目だ。
profile
1977年生まれ。慶應義塾大学卒業後、博報堂入社。著書に『さとり世代—盗んだバイクで走りださない若者たち』(角川書店)など。