「Global Talent Competitiveness Index(GTCI)」とは、人財の質に基づいた各国の競争力を測定したグローバルの調査レポート。「いかにその国が人財を育成し、成長させるか。また、人財を呼び込む魅力を有するか」などの6つの指標で評価している。3回目となる今回の調査では、「人財の誘致と国際流動性(インターナショナル・モビリティ)」がテーマだった。
過去の調査と比較して、トップ20に大きな変動はなかったが、調査結果から、人財の流動性と経済的繁栄には相関関係があることがわかった。1位のスイスと3位のルクセンブルクは人口の約25%が他国出身であり、2位のシンガポールではこの割合が43%にも達する。これら3カ国は貿易や投資の面でも高い開放性を持つ。
日本は昨年よりひとつ順位を上げて19位だったが、「Attract(人財に対する国の魅力度)」が45位、「External Openness(対外開放性。国外からの直接投資、人財・企業の参入のしやすさなど)」は42位と、人財の誘致と国際流動性の両方が課題となっている。
人財の国際流動性(インターナショナル・モビリティ)と「頭脳還流」が促進されなければ、創造的な人財は十分に育成できない。
人財の観点から見れば、人々の移動に取り組むことが国家にとって有益である。
金銭的動機や生活水準以外で、人財誘致に関する重要な差別化要因となるのは、経営の専門化と従業員の能力開発である。
給与水準が比較的低く、創造的な人財に恵まれた一部の国々が、国外の投資家から注目されている。アジア太平洋地域では、中国、韓国、フィリピン、ベトナム。ヨーロッパでは、マルタ、スロベニア、キプロス、モルドバ。中東・北アフリカでは、トルコ、ヨルダン、チュニジア。中央アメリカではパナマなど。
米国、シンガポール、スイスは長らく人財を惹きつける存在だったが、インドネシア、ヨルダン、チリ、韓国、ルワンダ、アゼルバイジャンなどが存在感を増しており、これらの魅力的な国々で働きたいと考える人財が増えている。
主にテクノロジーによって流動性が再定義され、知識労働もその影響を受けている。この変化は、活動分野全体が転換される可能性を示唆している。自国の異なる職場で働く必要に迫られる人々や、再び訓練を積み、離れた土地で職を得なければならない人々が生まれると予測される。
創造的な政策を採用して、グローバル人財の誘致を試みる大都市が増えている。今後は、都市の規模よりも機敏性とブランディングが重要な差別化要因になると考えられる。
中国、インド、南アフリカ、そして特にブラジルなどの新興国では、依然として職業能力の格差が存在し、人財に関する能力はあらゆる面で弱体化の兆候がある。これは、アイルランド、ベルギー、スペインなどの高所得国にも当てはまる。
<調査対象> | 世界人口の83.8%および世界のGDPの96.2%を占める109カ国 |
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<評価内容> | 指標は、人財競争力の「アウトプット」である2つの柱(LV Skills、GK Skills)と「インプット(Enable、Attract、Grow、Retain)」。 それぞれのスコアを加算平均し、国際人財競争力指数を算出しランキングする |
<調査機関> | INSEAD(フランス、シンガポール、アブダビに拠点を構えるビジネススクール)、ヒューマンキャピタル、リーダーシップ研究所(HCLI)、Adecco Group |