「カリフォルニアはすごく多国籍な文化。アメリカで生活した5年間は、私自身が"外国人"として生活した経験でした。前職の外資系企業も日本人の方が少ない環境でしたので、私自身は、あまり相手の国籍などは気になりません。むしろアメリカでの私自身の経験から、"外国人"として生活する大変さを理解できると思います」
2020.02.28
アデコグループにおいて、各職種に精通したキャリアコンサルタントが数多く在籍しているSpring転職エージェント。転職支援先は日系企業だけでなく外資系企業などさまざまです。その中で、ハイクラス向けの転職支援を専門に手がけているSpring Executive事業部のマネジメントの裏側をご紹介します。
Spring Executive部を統括するディレクターとして奮闘する安藤 聡子がキャリアをスタートしたのは、アメリカのカリフォルニアでした。
カリフォルニアの大学院を卒業後、現地の日系専門商社で営業職に就き、約2年間の勤務。帰国後は、外資系の大手人材紹介会社に入社し、IT業界のテクニカルポジションを中心とした人材コンサルティングサービスに従事します。Springには2016年に入社。2018年に、現職であるSpring Executive部のディレクターに就任しました。
そんな安藤のキャリアは、常にグローバルな環境の中にありました。
Spring Executive部のメンバーは18名ですが、国籍は日本、中国、韓国、インド、スペイン、フランス、イギリス、スイスの8カ国と非常にバラエティに富んでいます。これだけ多様性のある部署において、安藤はどのようにマネジメントしているのでしょうか。
「カリフォルニアはすごく多国籍な文化。アメリカで生活した5年間は、私自身が"外国人"として生活した経験でした。前職の外資系企業も日本人の方が少ない環境でしたので、私自身は、あまり相手の国籍などは気になりません。むしろアメリカでの私自身の経験から、"外国人"として生活する大変さを理解できると思います」
こうした体験を経て「国籍にとらわれない」ようになったという安藤。国籍、文化、考え方が違うのは当たり前。それを個性として捉え、ひとりの個人として向き合うことが大切だと言います。
帰国後に勤めた前職の会社では、上司の国籍はもちろん、性格もマネジメントスタイルもさまざま。そのときの経験が、安藤の理想とするマネジメントスタイルのルーツになっています。
「自分がつらかったときに、助けてもらったり、説得力のあるコメントをもらったりした記憶が残念ながらあまりありません。"まずは自分で考える"というタイプの上司が多くて。
実はその経験は私の中でけっこうトラウマになっているんです。自分で考え行動して経験値を高めていくことで、結果的には成長できたしタフになりました。でも一方で、自分はそういう放任主義のマネジメントはあまりしたくないと思うようになりました」
Springで働くことになったきっかけは、前職で安藤のメンターだったカナダ人女性でした。
「彼女とは性格はまったく異なりますが、"私は自分で稼ぐわ"というプレイングマネージャーのスタイルを尊敬していました。悩んだ末、結果的には新しい環境でチャレンジしてみようと転職を決意しました」
最初に声が掛かってから、すでに2年が経っていました――。
「最初の1カ月は、かなりアウェイ感があった」と安藤は言います。
入社時の肩書はシニアマネージャー。入社当時、組織も立ち上がってから間もないという状況もあり、人数も少なく個人主義で、決して雰囲気が良いとはいえない環境でした。
初めのうちは話し掛けられることもほとんどなく、安藤は自分から声を掛けたり、お土産のお菓子を配ったりと、ちょっとした会話をする機会を、あえてつくったくらいでした。
「チームワークもあまりない職場環境の中でシニアマネージャーとして入社したこともあり、不信感があったんでしょうね。
クライアントとのミーティングに同行しても、"なぜ一緒に行くのか"と言われたこともあります。あなたとクライアントとの関係構築のサポートをするために同行するのだと言っても、なかなか納得してもらえませんでした。一つひとつ信頼関係を築いていくことから始まりました」
安藤は週1回のチームミーティングはもちろん、30分間の1on1を週1回の頻度で各メンバーと必ず行い、クライアントミーティングなどもとにかく同行し、マネージャーとしてメンバーの業務を徹底してサポートしました。
そして、最も重視したのが、"自分自身が結果を出す"ということです。
「営業は明確に数字で判断される仕事なので、まず自分自身が毎週のKPIを必ず達成しようと。自分自身の立場を確立するという意味もありました。1日も早く"この人の言っていることには嘘がない、信頼してついていこう"という雰囲気をつくりたかったんです」
ディレクターに就いたのは2018年。安藤がまず取り組んだのは、マーケットのニーズに合わせた強い組織づくりでした。
クライアントは日本企業だけでなくグローバルです。たとえば、安藤が直接担当しているIT業界は中華系のエンジニアが多いので、自然と中国人のコンサルタントが増えていきます。業種や業界によって国籍も専門性も異なるニーズがあり、それに常に応えられるのが、安藤の考える"強い組織"なのです。
部内のメンバーに対しては、「裁量権を与え、自主性を重んじ、フレキシブルであること」を目指しています。
「個人主義だけれど、排他的ではない。お互いを尊重するスタイルは、自分なりに確立してきたマネジメントスタイルです。
たとえば、文章作成のときに困っている部下がいたとして、まずは自分で文章をつくってみるように伝えます。何を書こうか、どう伝えようかなどできるだけ話しやすい雰囲気も大事にしています。
みんな好きなことを勝手に話しているというか(笑)。意見をオープンに言い合える環境。それが働きやすさにもつながると思います」
もちろん本人も普段からオープンであることを意識しています。
「本当にオープンですよ。なぜ私が褒めるのか、なぜ注意するのかをメンバーみんなにシェアすることが、信頼関係にもつながっていると思うんです」
国籍や人種に限らず、一人ひとりの価値観の多様性を尊重しているからこそ、本人自らオープンマインドであることを心掛け、意見の言いやすい環境をつくる組織づくりを行っているのです。こうした組織づくりに取り組むことで、安藤が統括するSpring Executive部は毎年トップセラーを輩出しているのです。
これだけ実績を生み出すチームビルディングを行っている安藤ですが、部長職の打診があったときは迷いました。
「私の中では"部長"というタイトルはあまりにも大きすぎて。雲の上のような存在でした。はたして自分はそこまで精神的に成熟しているだろうか――、と」
また、安藤にはどうしても譲れないものもありました。
「たとえ部長であっても、私自身は1コンサルタントとして他のメンバーと同様に売上目標を持っていたかったんです。両立ができるのか悩みましたし、正直断ろうとさえ思っていたんです。
そのときに声を掛けてくれたのは、入社当時から支えてくれているバックオフィスのメンバーでした。私の業務の一部を彼女が担当してくれることで、今では理想とする働き方が実現できています。組織をマネジメントする立場として、そしてプレイヤーとして全力投球できるのは、周囲のサポートがあってこそです」
悩んだ末に部長職を引き受けることにした安藤。現在は、これまでには味わえなかった、チームではなく“部”という大きな組織をマネジメントすることへの喜びを感じる瞬間が多くあると言います。
「責任も重くなり、うまくいかないことも多いですが、その代わりうまくいったときの喜びは何ものにも代えがたいですね。
トップセラーが生まれることも、メンバーが成長していく姿も、組織が成熟していくことを実感することができ、自分がマネジメントする立場にいられるということはそうなかなかないことだと思います。
私自身の年齢やポジションが変わっていくことによって、物事の捉え方やマネジメントスタイルもだんだんと変わってきました。仕事の仕方も、年齢や経験とともに変わっていくものだと思いますし、変化という意味でも、仕事の楽しさは増えましたね」
どんなふうに組織をつくっていくか――。安藤の中では売上の数字を見るときも、以前よりビジネスとしての経営視点が増したと言います。
責任は増していますが、心の余裕も生まれています。おかげで、一人ひとりと向き合える時間も増え、こんな嬉しいこともありました。
「トップセラーになった女性ですが、入社したばかりのころ、自分でモチベーションを上げられないと毎日悩んでいました。その彼女から、"とりあえず30分の1on1を毎週やって話を聞いてほしい。ミーティングの後元気になるから"と言われたんですね。
私の1on1は30分間、徹底して相手を鼓舞します。どうポジティブに仕事をするか。失敗があれば注意しますが、ミーティング後前向きに取り組めるように、"あなたにはこんなすばらしいところがある。だからきっとできる"と必ず伝えるんです。ポジティブに取り組めば、きっと良い結果と数字がついてくるからです。
日本人にはあまり得意なやり方ではないかもしれませんが、アメリカでの生活や前職での外国人上司から学んだマネージメント方法です」
自身の経験から生まれたマネジメントスタイル。営業として結果を出しつつもメンバーのマネジメントを全力で行い、組織の成長にコミットしている安藤は、マネジメントへの想いをこう語る。
「営業は結果で判断される。その部分はフェアであるので、国籍も年齢もバックグランドも異なる、多様なメンバーで構成される組織をマネジメントする上で大事にしていることです。だからこそ、メンバーが結果を出すためにどうしたらいいかを考え、鼓舞し、モチベーションを高める。"ベストを尽くす"ことをあきらめさせないとでも言いましょうか。それが、私が実践しているマネジメントです」
アデコグループで今、プレイヤーとして自身も成果をあげながら、多様なメンバーの個性を尊重する強い組織づくりに日々安藤は取り組んでいます。
Written by PR-Table
Adecco Group コンテンツアーカイブ