「がんにかかった人に話を聞いてみると、ショックで仕事を辞めた方、職場に申し訳なくて辞めた方などもいます。でも、辞めたことを後悔している人が多いんです。私は続ける道を選びましたが、周囲の理解と支えがあったからこそ、今があると感じています。
報道やドラマなどの影響で “がんは怖い”というイメージが強くなっていますが、仕事や日常生活を続けられている人もたくさんいるんです」
2018.07.13
病気になると治療にかかる期間や体力などを心配し、仕事を辞めてしまう人は少なくありません。しかし、収入やキャリアが止まってしまうことは当事者にとって大きな課題です。アデコグループには、そんな人財を支える制度や環境があります。仕事と乳がん治療を両立させた風間沙織のがんとの向き合い方をひも解きましょう。
2013年のデータ(出典:国立がん研究センター がん情報サービス 最新がん統計)によると、日本人女性の11人に1人(約9%)は生涯で乳がんを経験するといわれています。特に乳がんは、多くの女性が仕事や育児に忙しい30~40代での罹患率も、決して低くはありません。
がんになると、治療にかかる期間や精神的・体力的な負担から、仕事を辞めてしまう人が多いのが現状です。しかし、30~40代でいったん仕事を辞めてしまうと、治療後の再就職や転職は難しくなることがほとんど。それまで築いてきたキャリアがそこで止まってしまうのはもちろん、安定した収入もストップしてしまいます。
2018年6月現在、キャリア推進室で働く風間沙織は、2014年に乳がんが発覚。手術や抗がん剤治療を経て、現在はホルモン治療を続けています。周りでは、仕事を辞めてしまった人の話も聞いていましたが、風間はその期間も退職せず仕事を続けてきました。
「がんにかかった人に話を聞いてみると、ショックで仕事を辞めた方、職場に申し訳なくて辞めた方などもいます。でも、辞めたことを後悔している人が多いんです。私は続ける道を選びましたが、周囲の理解と支えがあったからこそ、今があると感じています。
報道やドラマなどの影響で “がんは怖い”というイメージが強くなっていますが、仕事や日常生活を続けられている人もたくさんいるんです」
風間が仕事を続けられた背景には、アデコグループが積極的に整えてきた社内制度や、社内の理解、そして、がんさえも前向きにとらえる彼女の意思がありました。
乳がんが発覚したのは、2014年の2月のこと。5カ月前に受けた健康診断では異常なしという結果でしたが、風間は自分でしこりを発見。その少し前に彼女の妹も乳がんに罹患しており、その時の知識に救われました。
「がんの進行度合いはステージ1だったんですけど、診断されたとき『この状態なら死に至ることはない。抗がん剤治療もやらなくていいかもしれない』ということが自分でわかったので、ショックを受けておろおろしたり、泣いてしまったりというのはなかったですね。
むしろ、気丈に受け止められたと思います。私のがんがわかった時に、妹と話したんです。泣いて治るなら涙が枯れるぐらい泣いてやる。でも、それじゃ治らない。だったら、楽しんだほうがいいよねって」」
入院・手術をした3週間以外、現在に至るまで風間はほとんど休養することもなく、治療をしながら働き続けています。はじめは仕事との両立に不安を感じていましたが、主治医の言葉が彼女を安心させました。
「抗がん剤治療をはじめるときに主治医に、『私はこれ以上休めない』ということを伝えたら、『みんな仕事をしながらやっているわよ。治療を金曜日にすれば、土日で体調はなんとかなるから』と言われて、そういうものなんだと。
『副作用もいろいろあるけど、吐き気とかは全部薬でコントロールできるから大丈夫。髪が抜けるのは仕方がないから、早くウィッグを買いなさい』というアドバイスをくださって。
仕事を辞めたり、休んだりしなくてもいいんだ、と安心しました。逆に、何も知らない周りのほうが『本当に大丈夫なの?』って言ってくれましたね(笑)」
部署のメンバーも仕事の仕方を工夫し、当時マネージャーだった風間が不在でも仕事を完結できるように、仕組みづくりを行ないました。女性が多い部署にいた風間は、自分の姿を見ることで、同じように乳がんを経験する可能性のあるメンバーに、先入観でがんが怖いものだと思わないでほしいという思いがありました。
「社内でがんに罹患していることをオープンにしていたのは、女性の部下に対する、ちゃんと検診に行ってチェックしてねという思いと、入院・手術前後の時期を乗り越えれば、普通に働けるんだと知ってほしかったというのもありますね。もちろん上司のサポートもありましたし、忙しい部門だったので逆に復帰してからは、這ってでも会社に行こうという気概でした。
でも家でいろいろ考えてしまうよりは、それが逆によかったのかもしれません。部署のメンバーは、心配するというよりは、何も言わないで、日常として受け入れてくれたことが一番ありがたかったですね」
周囲の理解、そして気丈な気持ちを持ち合わせた風間ですが、時には闘病の辛さを感じてしまうこともあります。
「やっぱり治療の瞬間、瞬間はすごく辛いんです。治療の副作用で味覚に影響が出たり、体調が悪くなってしまったり。でも、やろうと思ってもできない体験だから楽しもうという気持ちは変わりませんでした。抗がん剤も、やらないという選択肢もありましたが、やればやった人の気持ちがわかると思って取り組みました」
風間はがん治療を通して、人生観が変わったと感じています。人に与えられた限りある時間をどう使うのかを真剣に考えるようになりました。
「『人はそんなに長くは生きられない』ということを改めて知ることができました。共にがんと闘っている仲間のなかでも、年に何人か空へと旅立ってしまいます。その現実と向き合ったり、自分もがんを経験したりして、1日あたり24時間しかもらえない“時間”を大切に使いたいと思うようになりました」
その考えは、仕事への姿勢にも表れています。以前は日々残業をしていた風間でしたが、がんを経験後はできるだけ仕事を定時で終わらせるようになりました。
そうして生まれた時間でヨガや水泳、ジョギングなどに取り組み、時間を有意義に活用。がん患者が集う合唱団に入り、毎週ベートーベンの「第九」を歌うのが今は一番の楽しみになっています。
それは、まさに「キャンサーギフト(がんからの贈り物)」。もちろん苦しみもありますが、彼女はがんによって、そんな苦しみを凌ぐほどすばらしい仲間に出会え、代えがたい経験を得ることができたのです。
「がんにならないと出会わなかった人たちが、世界を広げてくれています。乳がんだけじゃなくて、小児がんや食道がんなどの方と知り合って、いろいろな話を聞けたこと。それは私にとってものすごく大きなギフトでした。『みんなそれぞれ生きている』ということに気づかされたんです」
がんというとどうしても怖く暗いイメージがつきまといます。でも、実際は自分の意志や付き合い方でその経験をプラスに変え、仕事を続けていくことも可能なのだということを彼女は自身の体験として知ったのです。
抗がん剤治療を行なっていた当時、風間は、治療を行なう日や、体調のよくない日などはフレックス制度や会議へのリモート参加を利用して、出社・退社時間を調整しながら働いていました。2018年6月現在では、在宅勤務も積極的にとりいれるようになっています。
ですが、実は彼女は、会社にフレックス制度導入の話が持ち上がった当初、それに反対していたのです。
「2008年頃でしょうか。当社がフレックス制度の導入を検討している時に、社内でアンケートがあったんです。私はそこに“反対”と書きました。お客様がある仕事だからと。在宅勤務については私自身が怠けてしまうと思ったのと、メンバーと顔を合わせていないと仕事ができないという先入観があったんです。
でも、実際にやってみると違和感なく働けているし、逆に在宅の方が集中できるので仕事がはかどります。また細かいことで電話したり、スカイプ会議をしたりして確認するので、メンバーとのコミュニケーションがより密になりました。
さらに今では、コアタイムのないフルフレックス制度が導入されたり、Adecco Future Way of Workというプロジェクトを通して、リモートワークをはじめとする柔軟な働き方が推進されたりするなど、これまでにも増して働きやすくなっています」
彼女は、がんで仕事を辞めて後悔している人の話を聞くたびに、仕事を続けていく大切さと、周囲の支えの大きさを感じています。
「実際のところ、がん治療は金銭的な負担がとても大きいんです。その点、働いていることで定期収入があることは大きいし、いい意味での気持ちの切り替えにもなります。金銭面で治療を断念してしまう人がいるとも聞くので、そうした意味でも、がんになっても仕事を続けられる周囲の環境や理解には本当に感謝しています」
がんになっても、仕事をあきらめない。そうした環境の整備や多様な働き方をする社員への理解度が評価され、2018年3月、アデコグループは東京都が実施する「がん患者の治療と仕事の両立への優良な取組を行う企業表彰」で、奨励賞を受賞しました。
アデコグループは今後も、がん患者をはじめとする、さまざまな背景や価値観を持つ人々が、より柔軟で多様な働き方を実現することができるよう努めていきます。
Written by PR-Table
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