槙田 朋臣
Country Management Office
アデコ株式会社では、「『人財躍動化』を通じて、社会を変える。」というビジョンの実現を目指し、すべての働く人の働きがいの向上を目的としたさまざまな施策を展開しています。
同ビジョンを実現させるための試みの一環として、2023年5月からスタートしたのが、人財派遣事業におけるカルチャーフィットの測定です。
カルチャーフィットとは、「人財の持つ価値観と企業の組織文化がどれくらい適合しているのか」を表す人事用語。職務満足度やパフォーマンスの向上、離職率低下などが期待されることから、近年の採用や人事戦略において注目を集めている指標の一つです。
アデコでは、人財の持つ価値観を「仕事をする上でのやりがい」、企業における組織を「組織文化は職場のマネジメントにおいて、特に大切にしていること」と定義し、両者の適合度を上げる試みである「カルチャーフィット」を推進しています。
私たちが「カルチャー」に着目したのは、カルチャーの適合度と定着率・働きやすさに相関関係が見られたためです。アデコ株式会社において、人財派遣およびアウトソーシング事業のブランドであるAdeccoの派遣社員を対象に行ったPoC(概念実証)でも、カルチャーフィットしている派遣社員は定着率が3割高くなるという結果が得られているほか、カルチャーフィットによって働きがいが向上することもわかっています。
同調査では、カルチャーがフィットしている派遣社員の85.7%が働きがいを感じていたのに対し、カルチャーフィットしていない派遣社員の場合、働きがいを感じているのは10.3%のみでした。
一方で、ジョブマッチング時にカルチャーフィットの測定を厳密に行うだけでは、カルチャーの不適合を100%解決することはできません。これは企業や求職者の自社・自分自身への認識のズレなどが原因なのですが、最終的に企業と求職者のカルチャーがフィットしているかどうかは、実際に働き始めてみなければ、分からないとも言えます。
ですが、そうした認識のズレが発生したときであっても、カルチャーフィットの測定による「軸」があれば、適切な認識にアジャストしていくような対話が可能になります。このように「自己理解」を進めることも、結果的にジョブマッチングの精度を上げることにつながります。
カルチャーフィットの測定をもとにしてマッチングしていく中で、すでに成功例も出始めています。
エンターテイメント業界のある大手企業は、バックオフィス業務に100人以上の派遣社員を採用していました。しかし、2022年末時点で、6カ月以内の離職率が40.3%に上るなど、短期間における高い離職率が課題でした。
そこで、カルチャーフィットの測定を導入したところ、ひとくくりにされていたバックオフィス業務の中でも部署によって、それぞれのカルチャーがまったく異なることが判明。この測定に基づき、改めて採用を行ったところ、6カ月以内の離職率が12.1%まで低下しました。これは見落とされがちだった部署ごとのカルチャーの違いに気づくことができ、離職率を低減できた好例といえます。
また、別の事例においても、自己主張の強さや成果が重視される職場で馴染めなかった派遣社員が、カルチャーフィットの測定を通じて転職したことで、行動やプロセスも重視して、丁寧な仕事ぶりを評価してくれる職場が見つかった事例もあります。
企業、求職者双方からの回答が蓄積されつつあるため、今後はさらに多くの成功事例が出てくることが予想されます。
今後の展望について、カルチャーフィットの測定を最前線で牽引してきた、槙田朋臣は次のように話します。
「カルチャーがフィットするかどうかが判明するのは、就業がスタートしてからです。そのため、これまでのジョブマッチングのフェーズから、就業中のフェーズへと移行し、就業中の派遣社員のリアルな状況を把握することが、次のテーマになっていくと考えています。本当の意味で、求職者の自己理解が進み、クライアントの職場の課題に気づくためにも、当社として、就業中のフォローアップにもより注力していきたいですね」
槙田 朋臣
Country Management Office