GTCI 概要・調査結果
「Global Talent Competitiveness Index(GTCI)」とは、人財の質に基づいた各国の競争力を測定したグローバルの調査レポート。「いかにその国が人財を育成し、成長させるか。また、人財を呼び込む魅力を有するか」などの6つの指標で評価する。
1位と2位には、スイスとシンガポールが5年連続でランクイン。上位の国々は、比較的オープンな社会経済的政策が発達しており、人財の育成と管理がプライオリティの中心に置かれているなどの共通点が見られた。
日本は前回の22位から20位に順位を上げた。「Enable(活用)」は7位だったものの、「Attract (人財に対する国の魅力度)」 は54 位で、総合順位の伸びが小さくとどまる要因となった。「Attract」を構成する評価指標のうち、特に「男女の平等」に関する項目の評価が低かったことから、政府および企業はこれまで以上に賃金格差の是正や女性の労働市場参入の促進に取り組む必要があるといえる。
GTCI 6つの柱
- ①Enable
外部環境要因。政治の安定、政策などの規制要因、競争環境、労働市場の柔軟性、イノベーションを生み出すに適した環境かどうかなど
- ②Attract
人財に対する国の魅力度。国外からの直接投資、人財、企業の参入のしやすさなどの対外開放性、国内での人財の移動のしやすさ、多様性など
- ③Grow
人財開発のための方策。大学の質、留学生の受け入れ状況、教員と学生の比率、ビジネスマンのスキル育成の環境、ネットワーキングの状況など
- ④Retain
人財を国内に維持するための方策。税制や年金制度の整備状況、治安など生活する上での環境など
- ⑤Vocational and Technical Skills
基礎スキル、職業専門スキル、労働生産性。職業・専門訓練を受けている人財、技術者がどの程度いるか、若者の雇用状況など
- ⑥Global Knowledge Skills
グローバルな知識スキル。高いスキルを持つナレッジ・ワーカーがどの程度いるか、そういった人財によるイノベーションや起業の状況など
GTCI2018で新たに出された提言
- 1.ダイバーシティは競争力の中核的柱とみなされるべきである
- イノベーションを生み出す源泉としての人財の多様性は依然として手つかずの状態である。組織や自治体、国家は、その活用方法を徐々に学んでいるところである。
- 2.イノベーションを起こすには、認知のダイバーシティが重要
- 多様な人たちが集まったチームは、優秀ながらも似たような人たちばかりが集まったチームのパフォーマンスをしのぐ。GTCIでは、組織内における協業や他の組織との協業を測定する基準を通して、間接的に世界中の認知のダイバーシティ(知識、経験、考え方のダイバーシティ)の評価を実施している。
- 3.インクルージョンとダイバーシティは密接な関係にある
- 「ダイバーシティはパーティに招待されていること、インクルージョンはダンスを申し込まれていること」と例えられる。ダイバーシティを活用するには、組織はより受容性の高い行動規範と文化を構築しなければならない。受容性の高い組織の方が、ダイバーシティに対する障害を取り除きやすくなる。
- 4.教育システムは極めて重大な責任を負う
- 教育システムは、より体系的で広汎なダイバーシティ訓練(性別や文化、民族性などのアイデンティティの違いを尊重すること、無意識のバイアスに気付くこと)、協業において重要なスキル習得に不可欠な訓練を導入すべきである。
- 5.明確なビジョンを持ったリーダーが必要
- リーダー不在ではダイバーシティとインクルージョンは実現できない。組織・都市・国といったあらゆるレベルでビジョンを持った強力なリーダーシップが必要である。
- 6.人財の多様性が成功の鍵
- 都市はこれからもグローバルな人財の市場を変えていく。そういった意味で都市は多様性を推進するのに最適な研究の現場といえる。
〈調査対象〉
世界人口の89%および世界のGDPの98%を占める119カ国
〈評価内容〉
指標は、人財競争力の「アウトプット」である2つの柱(VT Skills、GK Skills)と「インプット(Enable、Attract、Grow、Retain)」。それぞれのスコアを加算平均し、国際人財競争力指数を算出しランキングする
〈調査機関〉
INSEAD(フランス、シンガポール、アブダビに拠点を構えるビジネススクール)
タタ・コミュニケーションズ
Adecco Group