働き方 インタビュー・対談 大事なのは、あきらめず考えること。足りないスキルを埋めて理想の生き方を実現する 本田直之氏

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2021.06.15
レバレッジコンサルティング株式会社 代表取締役社長 本田直之氏

コロナ禍により、働き方の多様化が進んだ。本田直之氏は、2007年から場所や時間にとらわれない生き方「モバイルボヘミアン」を提唱、実践している。理想の働き方を実現するにはどのような思考や行動が必要なのか、話を伺った。

働き方の選択肢が増え、自分で選べる時代に

──コロナ禍になるずっと前から、本田さんは時間や場所、1つの組織にとらわれない生き方「モバイルボヘミアン」を実践されています。「ワーク」と「ライフ」の境界がない生き方において、どのようなことを大切にされていますか?

大事なのは、人の評価に左右されないことです。2007年に僕が「東京とハワイの2拠点生活を実践する」と言ったときも、周囲からは「本当に大丈夫なの?」と言われました。でも、やってみなければわからないので、他人から反対されたからといって自分の意志がブレることはありませんでした。自分で考えて、自分で判断して、自分で行動することを一番大事にしています。このような生活のなかで得られるものと失うものはどちらもありますが、それを最初からわかったうえで、覚悟を持って選んだ生き方ですね。

──今回のコロナショックでは働き方の多様化が進み、ある意味、本田さんが提唱してきた考え方に時代が追いついた形になったと感じます。この変化をどうとらえていますか?

僕がずっと言っていた、働く場所はどこでもいい、働く時間もいつでもいいといった世界に、強制的に変わりましたよね。僕がこの生活を2007年に始めたときは、みんな「そんなのできない」と言っていたけれど、「いや、できたじゃん」と。世界がこれだけリセットされると、会社側も強制的に対応せざるを得ません。

一方で、自由が苦手な人も一定数いることがよくわかりました。コントロールされた環境で仕事をするほうが得意な人もいる。どちらが正しいということではなく、大事なのは自分の向き・不向きを知ることです。自分は自由に働くほうが幸せなのか、ルールに則ったなかで仕事をするほうが好きなのか。そこを間違うと、会社も個人もどちらも不幸になってしまいます。自分に合ったほうを選べばいいので、選択肢が増えたのはいいことだと感じています。

──自由な働き方をする前に、会社員も経験されていますね。会社員時代はどのような思考で働かれていたのでしょうか。

僕は時間や働き方の自由、場所の自由、人間関係の自由、あるいは考え方の自由が欲しかったので、会社員として働くときには、その制約からいつかは離れたいと考えていました。その時点で、もともと会社員には向いていないわけですよね。

すぐには実現できないとしても、「どうしたらできるのか」を常に考えていました。そのために、自分に何のスキルが足りないのかを考えて、会社員時代はそのスキルを身につける期間にしました。自分に力をつけていけば、理想の生き方は必ず実現できるはずだと思っていました。

当時、世界中どこにいても仕事ができるために必要なスキルとして考えたのが、ビジネスの場で使える英語力、そしてITと金融の知識でした。まずはITスキルをつけるために日本オラクルに入社しました。その後にシティバンク銀行で働き、金融の知識を身につけました。

ルールは絶対ではない。あきらめなければ道が広がる

──変化の激しい時代には、自分自身のスキルや価値を見つめ直し、必要なスキルを提供していくことが求められます。自分のスキルを磨くヒントはありますか?

自分はこの先どのように生きていきたいのか――。僕が「ハワイで生活したい」と考えたように、ワークだけでなくライフも含めて、これをまずは考えてみてください。そのうえで、その生き方に必要なスキルを洗い出して、足りないものを埋めていけばいい。

もちろん、こういう生き方がしたい、転職したいと思って行動しても、うまくいかないことはあります。でも、そこであきらめるのではなく、何が足りなくてうまくいかないのかに気づくことが大事です。気づかないまま放置すると、いつまでも理想の生き方を実現することはできません。

──本田さんも必要なスキルを身につけるために働く会社を選ばれたのですよね。転職で大変だったことはありますか?

先ほど言った通り、ITのスキルを身につけたくて日本オラクルを受けましたが、僕は理系でもなく、エンジニアの経験もありませんでした。当時、どのIT企業も未経験者は採用していませんでした。「そりゃそうだよな」と思いながらも、そこであきらめたら終わりです。自分がその会社でどんなことでなら貢献できるかをきちんと伝えられたので、採用してもらえたんです。未経験者は採用しないからといって、あきらめる必要はありません。多くの人はそこであきらめてしまうから、先に進まないのだと思います。

シティバンク銀行に入社したときも、銀行員経験もなければ金融の知識がすごくあるわけでもなかった。でも、そこで自分が何を提供できるのかを伝えました。

キャリアは積み重ねなので、これまでの経験から何を得たのかを分析、棚卸しをして、この分野で貢献できるということをアピールできれば道は開けていくと思います。

──未経験でIT企業に入られて、苦労されたのではないですか?

最初はまわりの人が言っていることが、全然わからなかったですね。でも、走りながら身につけるしかないので、最初はわかったフリをしてあとから必死に勉強しました。わからないからとポカンとしていても仕方ないので、相当なスピード感を持って身につけていかなければと思って努力しました。

やる気のある社員に学びの場を提供する

──コロナ禍で企業にも変化が求められます。これからの企業と従業員の関係構築のあり方について、どう思われますか?

企業が社員を縛る時代は終わりました。社員を自由にしながら、いかに成果を上げてもらうかを考えていかなくてはなりません。給料の面でもそうですし、企業が社員の面倒を一生みることができる保証はないので、社員を縛っても責任はとれませんよね。責任をとれないのであれば、自由にするしかありません。その代わり、能力に対してきちんと対価を払っていく。プロとプロとの付き合いになるわけです。

──社員を自由にすることで、離職が進むのではないかと心配の声も聞かれます。

それは、会社に魅力がないからです。企業は社員が働きたいと思うような魅力を高める努力が必要です。

そして、学ぶ機会を提供することも大事です。ただし、会社からこれを学びなさいと一方的に教育の機会を提供しても、あまり意味がありません。やらされて受けた研修は身につきません。

教育プログラムの提供やサポートはするけれども、あくまでもそれを受けるのは自主的に学びたいと考える社員だけ。学びたい人にはしっかり教育の場を与えていくのがこれからの企業に必要な姿勢ではないでしょうか。

人生は壮大な実験。失敗を恐れる必要はない

──複数の肩書を持って働くと、時間やモチベーションなどのセルフマネジメントが必要になります。本田さんはどのように管理されていますか?

基本的に僕はなまけ者で面倒くさがりで、放っておくとセルフマネジメントができない人間なんです。雨の日や寒い日はトレーニングはやりたくないなと思う。そんな自分の性格を理解したうえで、強制的に自分を動かすために、時間ごとにあらかじめやることを決めてカレンダーのアプリで管理しています。やる気のない子どもでも勉強を頑張れるのは、塾に行く時間が決まっているからですよね。時間通りに塾に行けば、勉強をやらざるを得ない。そういうパターンをつくることが大事です。

言ってしまえば、テレワークだとある程度なまけていたとしてもバレません。でも、自己管理ができるかできないかによって、1年後の成長に大きな差が出てくると思います。

──今、いろいろな働き方を模索している方にメッセージをお願いします。

コロナ禍によって、世界中が一律にリセットされました。こんなタイミングは戦後以来ありません。世界中、だれもが大変な状況になっています。戦後の復興にあたり新しい社会を築いてきた人たちがたくさんいたように、これをチャンスに変えられるかどうかが、これから先、大事になってくると思います。

生き方に迷ったときは、本を読むのが一番です。読書をして、自分自身と対話する時間を持ってください。何もないゼロの状況から考えるのは難しいので、自分に合った本を見つけて、そこに書いてあることを実践してみることから始めてみればいいと思います。

一番ダメなのは、あきらめたり、考えることを放棄したりすること。考えることを放棄していたら、今の時代は生き残っていけません。僕はよく「人生は壮大な実験」だと言っています。実験なんだから失敗してもいいし、たとえ失敗したとしても、走りながら変えていけばいいんです。ぜひこの大きな変化をチャンスだととらえて、理想の生き方の実現のために、行動を起こしていただきたいと思います。

Profile

本田直之氏

本田直之氏
レバレッジコンサルティング株式会社
代表取締役社長

ハワイ、東京に拠点を構え、日米のベンチャー企業への投資育成事業を行いながら、1年のうち5カ月はハワイ、3カ月は東京、2カ月は日本の地域、もう2カ月はヨーロッパを中心にオセアニア、アジアなどの国々へ食およびサウナを巡る旅をし、多拠点生活を実践。仕事と遊びの垣根のないライフスタイルを送る。オンラインサロン「Honda Lab.」主宰。著書は75冊、累計300万部を突破。