Adecco Groupでは、世界25カ国のオフィスワーカーと非オフィスワーカー各15,000人、合計30,000人以上を対象に、アフターコロナを見据えた働き方やライフスタイルに関する調査をしました。調査結果をもとに、人財流出を懸念する企業に対し、リテンションの重要性とともに、フレキシビリティ、リスキリング、メンタルへルス、ウェルビーイングなどの視点から取り得る方策を提示しました。
同テーマでの調査報告書の第3弾ですが、仕事の未来を形づくっている変革の波にはコロナ以外にも多くの要因が関わっているため、タイトルを変更しています。
世界の働き手の4人に1人以上(27%)が今後12カ月間以内に現在の仕事を離れ、そのうち45%の人が求人市場を積極的にチェックして新しい仕事に応募し、または面接に臨んでいます。
回答者の20%がリクルーターや他社からヘッドハントされたと回答し、大退職時代の潮流と、グローバルワークフォースの流動的な情勢を、リクルーターや企業が好機と捉えていることがうかがえます。
大きく目立つ離職率がここ数年の大退職時代の議論を呼び起こす契機になりましたが、離職率はジグソーパズルの1つのピースに過ぎません。
本レポートではそのような仔細な点を究明し、人財の流出を抑止することに加え、企業が人財パイプラインをプロアクティブかつ効果的に構築し、将来に備えるための方策を提示します。
例えば、スイス、EEMENAやオーストラリアの働き手は来年中に現在の会社を去る可能性がより高く、米国の働き手も今後12カ月以内に現在の職を離れると回答した働き手が29%に達しています(図1参照)。
これは一見スイス、EEMENAやオーストラリアの働き手の不満足度が特に高いことを示唆しているようにも思えますが、一方でこれらの地域は働き手の雇用維持に対する安心感が最も高い国々(それぞれ76%、79%、78%の働き手が自分の雇用の安定性に満足していると回答)でもあります。このことは、これらの地域の働き手がより自信をもって転職を考えられる状況にあることを物語っています。
現雇用主での勤務を今後12カ月間も続けるとした働き手は、 1 現状に満足している、2 現在の職務は安定している、3 良好なワークライフバランスがある、4 現在の同僚と働けることが楽しい、5 仕事のフレキシビリティが高いことをその理由に挙げています(図2参照)。
給与はランキングの6位です。このように、給与は最初に働き手を獲得する上では重要なものの、時間が経つにつれ能力開発やフレキシビリティの重要性が高まります。これは、働き手のエンゲージメントを維持するために雇用主が昇給のみに依存することはできないことを意味しています。
4つのリテンション(定着)レバー
以下では「4つのリテンション(定着)レバー」について考察します(図3参照)。
この図は、従業員の満足度と、そこから演繹される重要度をマッピングする4つの象限で構成されています。派生的重要度は、仕事に対する全体的満足度と職業生活の個別側面との相関関係を用いて計算されます。全体的満足度に対する正の相関関係が強ければ強いほど、働き手にとっての重要度が高いエリアとなります。
本レポートでは、働き手が極めて重要と挙げてはいるものの、仕事の満足度としては最も低い領域について焦点をあてて概説します。人財を維持し獲得するために、企業が影響を及ぼすことができるのはこの領域だと考えます。給与に限らず、キャリアアップ、フレキシビリティ、メンタルヘルスとウェルビーイングも含まれています。
給与は、世界の働き手の転職の最大の要因と言えます。今後12カ月内に退職すると回答した働き手の45%が、より良い給与が得られることを理由としています(図1参照)。しかし、従業員が帰属意識を持ち、現在の職にとどまりたい場合には、給与の重要性は優先順位の中で6番目に下がります。
ほとんどの人は、キャリアの岐路において、交渉しなければならない状況にある時には給与面を重視しますが、これが決着すると、給与は2次的な考慮要素になり、リテンションのための要素ではなくなるように捉えられます。
企業が人財の流出に立ち向かう中、過去1年給与の引き上げは、適切な人財を獲得する即効策でした。米国を筆頭に、世界の半数の働き手の給与が上昇しました(図2参照)。しかし給与アップだけでは持続的な定着効果がないことも急速に明らかになりました。
当社の調査は、企業は給与インフレに対する特効薬、すなわち、キャリア開発、フレキシビリティやワークライフバランスを含む、給与以外の従業員の満足度やエンゲージメントに必須な要素にフォーカスすべきということを示しています。
景気後退への懸念が大退職時代の勢いを緩和
雇用維持に対する高度の安心感、給与の上昇、退職者の増加を踏まえても、忍び寄る景気後退に対する働き手の懸念によって、大退職時代の流れが今後緩和される可能性があります。
インフレに対する財政的懸念に加え、最近の地政学的な緊張も影響を及ぼしています。
本レポートでは、働き手が極めて重要と挙げてはいるものの、仕事の満足度としては最も低い領域について焦点をあてて概説します。人財を維持し獲得するために、企業が影響を及ぼすことができるのはこの領域だと考えます。給与に限らず、キャリアアップ、フレキシビリティ、メンタルヘルスとウェルビーイングも含まれています。
コロナ禍によって在宅勤務ポリシーが不可避的に採用され、在宅でもオフィスで働くのと同様に生産性を挙げられるということを働き手が立証した結果、過去3年でフレキシビリティが顕著な問題に浮上したことは明らかです。
しかしこれを最近の問題として捉えるのは正しくありません。フレキシビリティに対する要請はコロナ禍のはるか前から存在していました。コロナ禍は、職場におけるフレキシビリティ拡大のための触媒の役割を果たしました。
最良の人財を獲得、維持する上でフレキシビリティは長らく重要な課題でしたが、職務遂行上のより高い自由度と選択の幅を求める働き手の声は一層高まりました。
これはデータからも裏付けられています。10人中6人のオフィスワーカーが、より高いフレキシビリティが得られることを直接の理由として、転職を検討したり、すでに転職したりしています。これは、フレキシブルを優先している、またはすでに優先している働き手が、前年比で19ポイント増加したことを意味します(図1参照)。
リモートワークを
より容易にするために 自宅/所有物を改良 |
実施済・取組中 | 33% | 39% | 29% | 28% | 44% | 28% | 21% | 31% | 27% | 20% | 42% | 32% | 33% | 39% | 35% | 46% |
検討中 | 28% | 26% | 22% | 27% | 34% | 40% | 24% | 31% | 27% | 22% | 35% | 26% | 25% | 28% | 25% | 24% | |
勤務時間/スケジュールの
フレキシビリティが より高い仕事に転職 |
実施済・取組中 | 25% | 30% | 23% | 19% | 41% | 22% | 17% | 23% | 20% | 20% | 29% | 21% | 22% | 34% | 24% | 36% |
検討中 | 34% | 33% | 27% | 34% | 32% | 43% | 35% | 34% | 41% | 31% | 39% | 34% | 34% | 37% | 32% | 30% | |
給与が下がっても
勤務時間を短縮、 または週4日勤務に移行 |
実施済・取組中 | 22% | 25% | 23% | 17% | 37% | 19% | 16% | 19% | 18% | 13% | 20% | 16% | 19% | 33% | 22% | 36% |
検討中 | 32% | 32% | 31% | 31% | 32% | 37% | 29% | 40% | 35% | 25% | 35% | 30% | 31% | 36% | 33% | 25% |
①働き手は一貫して勤務時間、勤務場所、休息時間、勤務スケジュールについての自由度を求めています。働き手に与えたフレキシビリティに対するコントロールを今以上に取り戻そうとする場合、企業は慎重に取り進める必要があります。
②週4日勤務制は人財の定着・獲得のための強力な方策になってきています。
しかし週4日勤務を認める際に企業は、全働き手が包摂されるよう主要な障壁に積極的に対処すること(例えば、5日目に仕事をすることがないように効果的な制約を設けるなど)が必要です。
③AIや機械学習などのテクノロジーによるルーティンワークの自動化は、協働とシームレスなハイブリッド勤務を可能にするITのシステムとテクノロジーと共に、この変化を推進するのに重要な役割を果たすでしょう。
本レポートでは、働き手が極めて重要と挙げてはいるものの、仕事の満足度としては最も低い領域について焦点をあてて概説します。人財を維持し獲得するために、企業が影響を及ぼすことができるのはこの領域だと考えます。給与に限らず、キャリアアップ、フレキシビリティ、メンタルヘルスとウェルビーイングも含まれています。
31%の働き手が、退職の主たる理由としてキャリアアップやリスキリング/アップスキリングの機会の欠如を挙げ、企業はその人財パイプライン喪失の危機に直面しています。
会社でのキャリアアップの機会に満足していると答えたのは、マネージャーでは70%であったのに対し、非マネージャーでは40%のみでした。
同様に、自分の会社は効果的にスキル開発のための投資を行っていると回答した非マネージャーは36%(一方マネージャーでは64%)にとどまりました(図1参照)。
給与とキャリアアップ(キャリアに関する対話、インターナルモビリティ⦅社内異動⦆の機会やスキル習得のための機会を含む)はすべての働き手にとっても、満足度が最も低下している層に対しても極めて重要です。
マネージャーの給与の増加幅が非マネージャーの増加幅を大きく上回っているのがわかりますが、同時にマネージャーの方が研修機会やキャリアアップに関する対話機会に恵まれていること(60%対40%)がうかがえます。
キャリアに関する対話が多ければ、社内のキャリアアップの機会にもより多くなり、現在の会社の中で成長する意欲が高まります。
本レポートでは、働き手が極めて重要と挙げてはいるものの、仕事の満足度としては最も低い領域について焦点をあてて概説します。人財を維持し獲得するために、企業が影響を及ぼすことができるのはこの領域だと考えます。給与に限らず、キャリアアップ、フレキシビリティ、メンタルヘルスとウェルビーイングも含まれています。
2021年以降メンタルヘルスは改善してきているとは言うものの、全働き手の4分1が過去1年でメンタルヘルスが悪化したと回答しており、バーンアウト(燃え尽き症候群)は引き続き全年齢・国籍・ジェンダーに亘る世界的な事象となっています(図1参照)。
メンタルヘルスが最も悪化したのはスペイン、イタリアとフランスで、とりわけ非マネージャーで顕著です(図2参照)。
企業がバーンアウトに対処するためには、3つのことが必要です。第1に、従業員に年次有給休暇の完全消化を奨励すること、第2にメンタルヘルスの危機に対処するための休暇を働き手に認めること、最後に、安全と信頼の文化を醸成することです。これらが、メンタルウェルビーイングをサポートするために働き手が挙げた必須事項であり、企業が効果的なウェルビーイング戦略を実践していく上での根幹に据えるべきものと言えます(図3参照)。
【調査概要】
調査人数:34,200人
調査実施国:日本、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オーストラリア、アルゼンチン、ベルギー、ブラジル、カナダ、中国、デンマーク、フィンランド、ギリシャ、メキシコ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ルーマニア、スロベニア、スウェーデン、スイス、トルコ、計25カ国
図表に記載されている地域略称
Bel/Ned:ベルギー、オランダ
EEMENA( 東欧・中東・北アフリカ):ギリシャ、ポーランド、ルーマニア、スロベニア、トルコ
LatAm:アルゼンチン、ブラジル、メキシコ
Nordics:デンマーク、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン