Adecco Groupでは、世界23カ国の働き手合計30,000人を対象に、働き方やライフスタイルに関する調査をしました。
今年で4年目を迎える「未来のグローバルワークフォース(Global Workforce of the Future)」は、変化し続ける仕事の世界を働き手の視点から調査するものです。
今年の調査では、人工知能(AI)と生成AIが仕事に与える影響にフォーカスしました。
現在は生成AIとの蜜月期
当初の働き手側の好意的な反応を超えて、生成AI導入の大規模な計画が組織に必要
生成AIは世界中の多くの仕事に影響を与えますが、ほとんどの働き手は、自分に対する影響を楽観的に考えているようです。当初の話題性から先へ進むため、働き手と組織は、生成AIの可能性と日常業務における位置づけをより深く理解する必要があります。それには、変更管理、新たな役割のマッピング、スキルアップが早急に求められます。
AIが自分の仕事に与える影響を前向きに捉えている働き手の割合
生成AIによって職を失うことを恐れている働き手の割合
生成AIは、管理業務の負担を軽減し、より戦略的な業務に集中する時間を生み出すテクノロジー(59%)であり、一般的に、仕事の時間を節約するテクノロジー(60%)であると考えられています(図2参照)。業界を問わず、多くの働き手がAIの影響を好ましく感じており、最も楽観的なのはライフサイエンス分野の働き手という結果になりました(図1参照)。
AIによる時間の節約を期待する働き手の割合 | 60% | 67% | 76% | 49% | 58% | 51% | 57% | 52% | 54% | 59% | 55% | 55% | 60% | 61% | 58% | 48% | 57% | 53% | 58% | 74% | 59% | 73% | 73% | 61% |
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AIによってルーティンワークが減り、戦略的な業務に集中できるようになることを期待する働き手の割合 | 59% | 67% | 76% | 48% | 59% | 52% | 51% | 53% | 50% | 56% | 52% | 52% | 61% | 60% | 57% | 52% | 57% | 51% | 58% | 72% | 61% | 73% | 69% | 61% |
AIの使い方を習得することで、キャリアの選択肢が増えることを期待する働き手の割合 | 58% | 69% | 73% | 45% | 50% | 56% | 51% | 50% | 54% | 53% | 52% | 54% | 58% | 56% | 53% | 46% | 56% | 49% | 60% | 72% | 59% | 72% | 68% | 62% |
現在の職場において、働き手はAIを楽観視していますが、中長期的にみた場合にAIが自分のキャリアにどのような悪影響を及ぼす可能性があるかを懸念する声も出ており、働き手の約5分の1は、AIによってキャリアを変えざるを得なくなったり、職を失ったりするのではないかと心配しています。
AIが個々の役割に与える影響を働き手が理解できるよう支援し、ガイダンスやキャリア転換計画を提供することが、働き手のエンプロイアビリティを守る鍵となります。
雇用主にとっての重要ポイント
生成AIへのアクセスは平等ではない
生成AIの採用が広がっても導入状況は異なり、働き手には明確なガイダンスが必要
多くの働き手は、トレーニングを受けずに仕事での生成AIの使い方を探り出しています。明確で全社的なガイドがなければ、使い方が危うくなる可能性があります。また、現在は誰でも生成AIにアクセスできるわけではありません。アクセスとガイドのギャップに対処するため、経営方針や人員計画では、公平性、包括性、責任などを考慮する必要があります。誰も取り残されるべきではありません。
仕事でAIを使用する方法について雇用主からガイドを受けている働き手の割合
大卒以上の働き手のうち、仕事で生成AIを活用している人の割合(高卒以下の働き手では、わずか51%)
わずか5日間で、ChatGPTは100万以上のユーザーを獲得しました。世界中で、働き手たちが革新的な新しいテクノロジーを試しています。
当社の調査によると、働き手の70%が現在、ChatGPTやGoogle
Bardなどのツールを使用しています。国別の生成AIの導入状況を調査したところ、オーストラリアが最も早く、フィンランドが最も遅いという結果になりました。日本の導入状況は54%と、調査対象23カ国中21番目でした(図3参照)。
生成AIを使用している理由のトップは、「情報を素早く見つけるため」と「基本タスク/ルーチンタスクの時間を節約するため」です。また、「情報を素早く要約するため」にも使われています。
広く普及しているにもかかわらず、調査対象となった働き手の10人に1人は、生成AIツールやその使い方を知りません。組織には、生成AIとは何かだけでなく、その可能性を最大限に活用する方法の教育も働き手に提供する余地があります。
雇用主にとっての重要ポイント
生成AIを使用しない働き手は、その理由のトップが信頼性の欠如であると回答しています(35%)。この信頼性の問題は南北アメリカで最も高く(43%)、ヨーロッパ(35%)とアジア太平洋(28%)では低くなっています。また、多くの働き手は、AIの使用が非倫理的/差別的になることも懸念しています。
AIツールの進歩に伴い、対象となるスキルアップ、ガイド、倫理的な使用に関する組織の明確な方針に則した採用が増えると予想されます。働き手の約10人に6人はAIのトレーニングに興味を示しているため、雇用主には働き手の希望に沿ってギャップを埋めるチャンスがあります。
AIの使用が非倫理的/差別的になることを懸念している働き手の割合 | 51% | 62% | 60% | 43% | 45% | 49% | 45% | 44% | 45% | 47% | 43% | 46% | 51% | 50% | 46% | 47% | 52% | 42% | 57% | 50% | 54% | 46% | 54% | 57% |
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雇用主にとっての重要ポイント
独自のヒューマンスキルを育てる必要性
多くのテクニカルスキルがテクノロジーに取って代わられ、ソフトスキルの重要性がさらに高まる
これは技術的には大きな転換期かもしれませんが、リーダーシップ、共感力、EI(感情的知性)といったヒューマンスキルは依然として重要です。テクノロジーは働き手が多くの仕事をこなすのに役立ちますが、同時にソフトスキルは必要です。変化し続ける仕事の世界に対応するために、組織はコーチング、トレーニング、リーダーシップ開発を提供し、これら人間特有の特性を強化しなければなりません。
人間味のあるタッチの方が仕事に影響すると考えている働き手の割合
ヒューマンスキルで最も替えがきかないと働き手が考えているもの
組織も働き手も頭を悩ませているのは、「将来、人間の役割はどうなるのか」ということです。 働き手は、EI(感情的知性)や共感力といった人間特有の特性がAIに取って代わられることはないと感じています。そして、働き手の61%が「AIは単なるツールであり、人間味のあるタッチの方が仕事に影響する」と考えています(図5参照)。AIよりも人間味のあるタッチの方が仕事に影響すると最も考えているのは、テクノロジーの最前線で働く働き手であるという結果となりました。
AIは単なるツールであり、人間味のあるタッチの方が仕事に影響すると捉えている働き手の割合 | 61% | 69% | 69% | 47% | 59% | 56% | 63% | 56% | 51% | 63% | 55% | 58% | 62% | 62% | 61% | 55% | 59% | 56% | 59% | 70% | 63% | 70% | 68% | 63% |
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雇用主にとっての重要ポイント
スキルアップは選べる特権
人財を確保するために昇進を重視する
「大退職時代(Great Resignation)」は終わりましたが、人財不足は依然として大きな問題です。多くの働き手は職場に残ることを検討していますが、その多くは見返りにトレーニングやキャリアアップの機会を求めています(図1参照)。給与は人財を惹きつける要素ですが、定着させるものではありません(図2参照)。今日では、キャリア開発とスキルアップがすべてです。インターナルモビリティ(社内異動)が非常に重要なのです。
「今後12か月以内に今の会社を辞めるつもり」と回答した働き手の割合を2022年と2023年で比較すると、トルコ、オーストラリア、スイスを中心に、働き手が現在の仕事を辞める可能性が1年前より低下していることがうかがえます。
現在の雇用主の元で働き続けることを考えている働き手の割合(2022年は61%)
2022年以降、社内昇進を希望する働き手の増加割合
退職する理由と同じ職場に留まる理由の上位は、ほぼ毎年同じです。退職理由のトップはより良い給与を得るためですが、働き手が現在の雇用主に満足している場合、給与はその職場に留まる理由の9位まで下がります(図2参照)。
給与の次に、働き手が他の会社に移る最も一般的な要因は、より有意義な役割を求めて能力開発の機会を追求することと、バーンアウト(燃え尽き症候群)を回避することです。
賃金に対する国別の調査結果によると、働き手が賃金に最も満足しているのはオーストラリアとスイス、最も満足していないのはルーマニア。ギリシャとルーマニアでは半数以上の働き手が賃金が不当だと考えているのに対し、オーストラリアとスイスではわずか14%という結果になりました。
より良い給与を得たい | 31% | 22% | 32% | 28% | 37% | 28% | 38% | 24% | 27% | 51% | 26% | 43% | 34% | 52% | 56% | 41% | 24% | 37% | 21% | 50% | 36% | 48% | 41% | 29% |
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自分でビジネスをしたい | 25% | 26% | 16% | 23% | 20% | 25% | 23% | 25% | 22% | 24% | 22% | 27% | 27% | 20% | 29% | 22% | 22% | 24% | 20% | 29% | 23% | 30% | 32% | 30% |
現在の職場で自分の専門性/キャリアが進展していない | 21% | 22% | 20% | 20% | 23% | 23% | 29% | 19% | 20% | 21% | 19% | 19% | 19% | 24% | 27% | 19% | 20% | 23% | 21% | 22% | 20% | 31% | 19% | 22% |
仕事が充実していない/有意義でない | 20% | 21% | 20% | 19% | 22% | 18% | 22% | 19% | 22% | 30% | 19% | 21% | 19% | 21% | 14% | 26% | 18% | 27% | 14% | 21% | 22% | 17% | 14% | 20% |
バーンアウトや働きすぎが心配/仕事量が多すぎ | 20% | 20% | 23% | 21% | 20% | 24% | 27% | 19% | 20% | 11% | 16% | 14% | 20% | 24% | 16% | 15% | 18% | 19% | 16% | 28% | 19% | 13% | 17% | 23% |
現在の仕事/役職は安定している | 21% | 19% | 21% | 15% | 26% | 21% | 24% | 20% | 17% | 31% | 20% | 20% | 20% | 29% | 30% | 26% | 24% | 28% | 17% | 17% | 23% | 21% | 23% | 22% |
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ワークライフバランスに満足している | 20% | 16% | 19% | 17% | 22% | 21% | 22% | 20% | 16% | 20% | 18% | 26% | 18% | 21% | 22% | 20% | 19% | 26% | 16% | 24% | 25% | 19% | 18% | 21% |
同僚と働くのが楽しい | 19% | 16% | 18% | 9% | 25% | 16% | 25% | 22% | 18% | 20% | 17% | 24% | 24% | 28% | 30% | 18% | 18% | 26% | 14% | 24% | 20% | 19% | 15% | 19% |
現在の仕事の労働条件に満足している | 17% | 18% | 18% | 16% | 18% | 15% | 20% | 17% | 15% | 21% | 13% | 16% | 19% | 21% | 22% | 20% | 17% | 16% | 16% | 20% | 16% | 20% | 16% | 18% |
自分のスキルを活かせる仕事で満足している | 17% | 17% | 19% | 14% | 14% | 18% | 22% | 15% | 18% | 17% | 16% | 16% | 18% | 15% | 16% | 16% | 16% | 19% | 17% | 19% | 16% | 18% | 14% | 18% |
雇用主にとっての重要ポイント
スキルは貴重な通貨
個々のスキルと求められる将来のキャリアをマッチさせる
仕事の世界は、仕事ベースの経済からスキルベースの経済へと移行しています。持続可能な経済の鍵は、スキルの移転可能性です。市場価値を高めるために、働き手は専門性をアップデートすることでキャリアをコントロールしようと考えています。組織は、全ての階層の社員全員を対象とした能力開発に投資することで、彼らが適切なスキルを身につけるよう支援できます。
自分のスキルが転用可能であると考えている働き手の割合。
テクノロジー、プロフェッショナルサービス、金融サービスの働き手が最も自信を持っている
雇用主が彼らのスキル開発に投資していると答えた非管理職の割合(経営陣では74%)
2022年以降、雇用主がスキル開発に効果的な投資をしていると回答した働き手が増えています(図1参照)。
しかし、非管理職は取り残されており、会社がスキル開発に効果的な投資をしていると回答したのはわずか45%でした(経営陣では74%)。
働き手の62%は今後、自分のスキル開発をよりコントロールしたいと考えています(図2参照)。
この回答は、テクノロジー、金融サービス、プロフェッショナルサービスの業界で最も多く、リーダー層、南北アメリカの働き手、35~49歳の働き手で最多となっています。
今後は自分のスキル開発をよりコントロールしたいと考えている働き手の割合 | 62% | 68% | 76% | 40% | 56% | 57% | 60% | 55% | 54% | 59% | 56% | 59% | 65% | 64% | 70% | 47% | 60% | 55% | 61% | 76% | 65% | 80% | 77% | 67% |
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雇用主にとっての重要ポイント
変化の激しい環境では、働き手は職務の転換、さらには業界の転換にも対応する必要があります。このような流動性は、スキルの向上が原動力となります。
多くの働き手は、自分のスキルが他の業界にも転用できると信じています。最も自信があるのはホワイトカラーと技術ワーカーで、ブルーカラーの働き手は全体平均を7%ポイント下回っています(図3参照)。
自分のスキルの転用可能性に最も自信があるのは、業界別でみるとテクノロジー、プロフェッショナルサービス、金融サービスの働き手、国別でみるとブラジル、次いでオーストラリアと中国の働き手という結果となりました。日本は31%と、全体の最下位という結果となりました(図4参照)。
現在のスキルを他の業界にも転用できると信じている働き手の割合 | 56% | 66% | 66% | 31% | 56% | 50% | 53% | 51% | 51% | 54% | 51% | 58% | 59% | 57% | 60% | 57% | 47% | 60% | 54% | 61% | 62% | 67% | 58% | 63% |
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雇用主にとっての重要ポイント
バーンアウト(燃え尽き症候群)の蔓延
ウェルビーイングを育み、ストレスや疲労のリスクを軽減する
生成AIのような新技術で私たちの働き方は変わりますが、職場でどう感じるかが変わるとは限りません。AI活用の競争において、組織は最も貴重な資産である人財を守らなければなりません。働き手が新たな責任を担う際にバーンアウト(燃え尽き症候群)は深刻なリスクとなります。組織が人財を軽視すれば、テクノロジーで補うことはできません。成功するのは、働き手に力を与え、その能力を高め、ウェルビーイングを守る企業です。
過去12か月間にバーンアウトを経験した働き手の割合
年次有給休暇の完全消化を奨励されていない働き手の割合
2022年以降、バーンアウトのリスクに対する懸念は変わっていません。
マネージャーは他のどの職務レベルよりもバーンアウトが多いという調査結果となりました(図1参照)。
また、国境に関係なくバーンアウト(燃え尽き症候群)のレベルは高いということが分かる結果となりました。
現在、年次有給休暇をすべて消化するように雇用主が奨励していると答えた働き手は、わずか5分の1です(図2参照)。また、定期的に休暇を取得することがバーンアウトを防ぐ最も簡単な方法の一つであるにもかかわらず、78%の働き手は休暇取得を支援されていると感じていません。
働き手が年次有給休暇の消化を奨励されていると感じるか、または割り当てられた休暇をすべて消化しているかについて、年功レベルの影響はありません。
現実的な期待値を設定し、仕事量や作業負荷を管理することで、良好なワークライフバランスを実現している | 22% | 25% | 24% | 17% | 24% | 28% | 21% | 22% | 23% | 16% | 20% | 25% | 22% | 19% | 21% | 22% | 22% | 24% | 21% | 17% | 21% | 18% | 27% | 25% |
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年次有給休暇の完全消化を奨励している | 22% | 20% | 24% | 22% | 24% | 25% | 31% | 21% | 21% | 22% | 18% | 18% | 20% | 27% | 30% | 24% | 21% | 23% | 18% | 23% | 27% | 20% | 25% | 22% |
包括性と帰属意識のある環境を作り出している | 19% | 21% | 23% | 11% | 18% | 20% | 19% | 16% | 17% | 14% | 19% | 21% | 23% | 18% | 16% | 15% | 18% | 22% | 17% | 21% | 19% | 21% | 22% | 22% |
定期的に従業員アンケートを実施してメンタルヘルスのニーズを評価し、それに応じて支援プログラムを調整している | 20% | 23% | 27% | 19% | 17% | 25% | 18% | 17% | 20% | 9% | 19% | 20% | 21% | 12% | 13% | 12% | 20% | 26% | 21% | 17% | 18% | 17% | 21% | 22% |
マネージャー/スーパーバイザーを対象に従業員のメンタルヘルスのサポート方法についての研修を実施している | 18% | 20% | 22% | 16% | 17% | 21% | 12% | 16% | 19% | 10% | 18% | 17% | 16% | 12% | 12% | 12% | 19% | 17% | 20% | 17% | 17% | 18% | 18% | 20% |
雇用主にとっての重要ポイント
【調査概要】
調査人数:30,000人
調査実施国:日本、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、オーストラリア、ベルギー、ブラジル、中国、デンマーク、フィンランド、ギリシャ、メキシコ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ルーマニア、スロベニア、スウェーデン、スイス、トルコ、計23カ国