働き方 仕事の未来 人財 組織 グローバル 2024年ダボス会議で語られた「仕事の未来(Future of Work)」のための3つの重要ポイント

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2024.02.27
2024年ダボス会議で語られた「仕事の未来(Future of Work)」のための3つの重要ポイント

2024年の世界経済フォーラム(World Economic Forum)の年次総会(通称ダボス会議)のテーマは、「信頼の再構築(Rebuilding Trust)」。議題として多くの重要な課題が取り上げられる中、ステージに登壇した参加者たちは、今日の世界的な変化が仕事の未来(Future of Work)」にとって何を意味するのかについて、洞察を共有しました。

ダボス会議では、AI時代のリーダーシップからスキルの向上、さらには柔軟性(flexibility)の本当の意味についてまで、仕事の未来が重要なトピックとして取り上げられました。

ジョブ型雇用からスキルベースの雇用へのシフト

グリーントランジション(環境への配慮や持続可能な社会への移行)と、デジタルテクノロジー(特に生成AI)における継続的かつ急速な進歩のすべてが仕事の世界を揺るがしています。ほぼ一夜のうちに、人々の役割や企業のニーズの本質を根本的に変えてしまいました。これにより、ジョブベースの経済からスキルベースの経済へのシフトが加速しています。

「すべての経営層の議論で、現在、最重要課題となっているのは“人財”です」と、Adecco Group グループCEOを務めるDenis Machuelは言います。

世界の変革期において組織が競争力を維持するために、これからは人財の採用と維持だけでなく、再訓練も不可欠になります。リーダーはまず、従業員の現在のスキルセットを十分に理解し、従業員に役割の必然的な進化に備えてもらう必要があります。トランスフェラブルスキル(別の仕事への移転や応用が可能なスキル)を育み、非直線的なキャリアパスを促し、一人ひとりが自らの能力開発に主体的に取り組むことができるようなカルチャーを醸成することが、変化の激しい時代における組織の健全性とともに、従業員のウェルビーイングも守ることになります。「テクノロジーへの投資と同様に、人への投資が不可欠です」

さらに、適応力のある労働力の育成は、強固な備えとなります。何が起ころうとも、未来の衝撃や変化から会社を守ってくれるでしょう。

すべての人のための仕事の世界の構築

スキルの習得の重要性とともに、柔軟性(flexibility)と包括性(inclusion)も、仕事に関する議論の主役となってきたテーマです。その大部分が、リモートワークやハイブリッドワークの視点から語られてきました。しかし、柔軟性とは何かを総体的な視野でとらえた場合、キッチンからZoom会議をすることとオフィスへ復帰する義務との対比だけにとどまらない、多くの意味合いがそこには含まれます。

働く人々のうち、オフィスで勤務する人の割合はわずかです。サービス業に従事する人や、現場で働く人など、リモートワークが許されていない役割を担う働き手にとっては、柔軟性の捉え方はかなり異なるかもしれません。また、包括性に関して広く浸透している前提についても注意深く考える必要があります。例えば、“在宅勤務が女性には特に重要である”という考えは、有害な先入観を反映している可能性があります。「そういった考え方は、“女性は、期待されている無報酬のケア労働をこなすために本当に時間が必要なのだ”という先入観や固定概念を強めるものです」と、Adecco GroupのChief Sales & Marketing Officer、Valérie Beaulieuは言います。「柔軟性とは、総体的に考えると、男女ともに取り入れることができる場合に、女性にとっての機会になり得るのだと実感しています」

柔軟性と包括性に関するもうひとつの重要な焦点は、障がいのある働き手を支援する職場づくりです。リーダーには、包括性に深く配慮しつつ、障がいではなくスキルや能力へフォーカスするという繊細な責任があります。その解決策のひとつは、トップダウンで包括性の具体的なモデルを作ることです。AdeccoブランドのPresident Christophe Catoirは、「リーダーシップやマネジメントにおいて、インスピレーションとロールモデルは非常に重要」だと言い、Adecco Groupの2人のエグゼクティブメンバーが自身の障害や経験をオープンにしていることが、組織にとって計り知れない利点になったことを強調しました。彼らの透明性は、障壁を取り払うことだけでなく、根強い先入観に立ち向かい、それらを取り除くことに関しても議論を始めるのを後押ししました。

これらの課題は、特にリーダーシップにおいてヒューマンスキルの重要性が高まっていることを浮き彫りにしています。有意義な包括性と人を中心とした方針を推進できるのは、自らが率いるチームへの理解と熱意を持つ人財だけです。

進歩の中心は“人”であり続けるべき

生成AIの出現は、目まぐるしい速度で職場を変えています。リーダーたちは今、従業員を守りながらAIの力を受け入れるという矛盾する課題に取り組んでいます。このバランスを適切に取ることは、企業にとって重要なだけでなく、持続可能な成長とともに、より幅広いソーシャルウェルビーイング(人間関係に対する幸福度)を確保するためにも不可欠です。

Denis Machuelは、「AIに伴うリスクは、それが平等をもたらすものではないことにあります。人々の準備が整っていなければ、より大きな分断を生み出します」と述べ、人を中心として職場のイノベーションに取り組むことの重要性を論じました。「生成AIの変革に対応できる備えがある働き手と、取り残されてしまう働き手という、二分化した労働力を生み出しかねない重大なリスクがあります。」これを回避するには、積極的で戦略的な計画立案、スキルの習得・向上への継続的な投資、責任あるAIの活用、そして従業員との継続的な対話が必要になります。

経営層は、人々のエンプロイアビリティ(雇用される能力)を守り、支援しながらテクノロジーを活用して効率化を図ることと、共感的でEI(感情的知性)の高いリーダーシップを維持することの間で、微妙なバランスを取らなければならなくなります。このような新しいタイプのリーダーが成功に不可欠な存在となりますが、ほとんどの場合は準備ができていません。現代の経営幹部や管理職の多くは、チームを導いて変革期を乗り越えるための技術スキルやソフトスキルを持っていないのです。実際に、近日公開予定の最新のAdecco Groupの調査結果によると、「自社の経営陣がテクノロジーによってもたらされるリスクや機会を理解するのに十分なAIスキルや知識を備えている」と考えている経営幹部は、わずか43%にとどまっています。

慎重に考え抜いたうえで導入すれば、AIは働き手に取って代わるのではなく、人間の努力を補強するものになります。テクノロジーを統合する目的は、最終的には職場の人間を置き換えることではなく、人に力を与え、人の潜在能力を引き出すことであるべきなのです。

ダボス会議の後に続く道

現代のリーダーたちは、次々と起こる国際的な危機やテクノロジーの移り変わり、働き手の期待の変化に取り組んでいます。こうした変化には鈍化の兆しはありません。

しかし、手を取り合い、人々のウェルビーイングを特に重視していけば、テクノロジーは職場における相対的な包括性や多様性を脅かすのではなく、サポートするものになり得るのです。責任あるイノベーション、リーダーと働き手の間の信頼関係の構築、そしてエシカル(倫理的な)リーダーシップに取り組むことで、現在の課題と変化は、すべての人にとってより強固で人間的な職場の形成に役立つものになるはずです。