Adecco Groupの「Leading through the Great Disruption(AI によるディスラプションを乗り切るには)」では、日本を含む世界9カ国のCレベル(経営幹部レベル)2,000人を対象に調査を行いました。
本調査は、人工知能(AI)と生成AIが人財戦略に及ぼす影響に焦点を当てています。
「AIが各業界のゲームチェンジャーになると信じている」と回答した人の割合
「デジタルトランスフォーメーションが大きく進展した」と回答した人の割合
現状では、デジタルトランスフォーメーションが大きな進展を遂げた企業は10社に1社のみに過ぎません。
「AIが業界にとってゲームチェンジャーである」と回答したリーダーは61%。
役職別でみると「AIが自社にとってゲームチェンジャーである」という質問に対してCFOやCEOはAIのもたらすチャンスに慎重になっていることがわかります(図1)。
CFOやCEOは、AIの導入を加速させるために、AIがもたらすチャンスに対してより確信を深める必要があります。
「経営陣のAIスキルや知識に自信がない」と回答した人の割合
「リーダーシップ開発強化のための活動をすでに行っている」と回答した人の割合
リーダーは正しい戦略を立てる前に、AIがもたらす課題とチャンスを理解する必要があります。
一方で、過半数のリーダーは経営陣のAIスキルに自信がないと答えており、組織の指導層には深刻なスキルギャップがあります(図2)。このことは、働き手の準備にも連鎖的に影響を及ぼします。
AIによるディスラプション(創造的破壊)を乗り切るには、リーダーが「適応性のあるマインドセット(Adaptive mindset)」を迅速に身に付ける必要があります。
リーダーの準備が整わないと、組織全体が遅れをとります。現時点でAIを理解するためのスキルや知識を持たない経営陣は、働き手にスキルやガイダンスを提供する可能性が低くなります(図3)。AIによるチャンスに働き手の力を結集させるためには、リーダー自らがAIに関する学習に取り組んでいると示す必要があります。
「デジタルトラスト(デジタル技術、サービス、関連組織等への信頼)は今後5年間で、自社のビジネスに大きな影響を与えると思う」と回答した人の割合
「責任をもって倫理的にAIを使用するための枠組みがある」と回答した人の割合
企業は最初の段階から、倫理的かつ責任を持ってAIを利用するための枠組みを作る必要があります。
職場におけるAIの成功には、デジタルトラストを築くことが最も重要です。働き手はこの技術に自信を持つ必要があります。
責任あるAIポリシーは、企業全体の賛同を獲得し、信頼を築き、AI導入を前進させるための必須事項です。
「AIスキルを持つ人財を社外から採用する予定」と回答した人の割合
「社内で育成する」と回答したのはわずか34%
従業員の業務がAIの影響を受けた場合、「彼らを社内で再配置する」と回答した人の割合
ほぼすべての職務でデジタルとテクノロジーのスキルが必要とされるため、競争の激しい雇用市場はさらに厳しくなることが見込まれます。
ほとんどの企業では、既存のチームを教育するよりも、社外から人財を採用することを予定しています(図5)。このアプローチには、スキル不足を生み出し、賃金を押し上げる危険性があります。
企業は、スキル不足を煽ることを避け、働き手のエンプロイアビリティ(雇用され得る能力)を確保するために、社内の働き手の中で関連するスキルを育成する必要があります。
現在の最大のスキルギャップは「創造性とイノベーション」
「生成AIはスキルアップと開発において重要な役割を果たす」と回答した人の割合
リーダーは、コーチング、トレーニング、リーダーシップ開発によって、人間ならではの特性をより高める必要があります。
企業は、創造性、イノベーション、クリティカルシンキングにおいて、大きなギャップに直面しています。
AIは、働き手を労働集約的作業の負担から解放し、人間の潜在能力を引き出すために活用すべきです。AIはまた、トランスファラブルスキル(汎用的で別の業種や職種での応用が可能なスキル)を強化する、社内での流動性を促進するといった重要な役割も担います。
【調査概要】
調査対象:世界9カ国のCレベル(経営幹部レベル)
サンプル数:2,000人
実施期間:2023年10月~12月
調査実施国:日本(266)、カナダ(90)、米国(500)、英国(189)、ドイツ(189)、フランス(170)、スペイン(177)、オーストラリア(198)、シンガポール(221) 計9カ国
※調査対象国は、すべての地域をカバーするように選択され、国別のサンプル数は、国際ビジネスにおけるそれぞれのウェイトをほぼ反映しています。本調査の信頼区間の水準は95%です。
属性別の詳細な調査結果については、レポートの参考資料をご参照ください。