Adecco Groupでは、世界27カ国の働き手合計35,000人を対象にした調査を行いました。
今年で5年目を迎える「未来のグローバルワークフォース(Global Workforce of the Future)」は、変化し続ける仕事の世界を働き手の視点から調査するものです。
今年の調査では、変化を乗り越える方法と、人工知能(AI)が仕事に与える影響に焦点を当てています。
働き手の40%が長期的な雇用の安定に不安を抱いており、経済情勢や雇用の安定が最大の関心事になっています。
現在の会社に留まることを選ぶ働き手は83%に上り、3年連続して増加しています。これは過去3年間での最高値となりました(2022年は61%)。
働き手は、AIが現実世界に与える影響を過小評価していたようです。AIの影響による失職を恐れていた回答者は、前年にはわずか8%でしたが、今年は13%が仕事を失ったと回答しています。
長期的な雇用の安定に不安を抱いている働き手の割合
現在の雇用主の元に留まる意向を示した働き手の割合。
過去3年間での最高値(2022年は61%)
AIによって失職した働き手の割合。
2023年に懸念を示した人はわずか8%
一部の働き手は、雇用主の支援を受けることによって、抜きん出た結果を出しています。企業は、この層をワークフォース内に増やして未来のリーダーを育成するために、スキル育成に取り組む必要があります。
本調査によると、未来対応型の働き手(適応力があり、キャリアプランにおいて柔軟性を持つ意思があり、スキルを養うことに積極的な働き手)は労働人口のわずか11%を占めるにすぎません。
未来対応型の働き手においては、93%が雇用主から個別のキャリア開発プランを提供されており(働き手全体では51%)、95%が雇用主が提供するリーダーシップトレーニングに頻繁に参加していると回答しました(働き手全体では57%)。
未来対応型の働き手(適応力があり、キャリアプランにおいて柔軟性を持つ意思があり、スキルを養うことに積極的な働き手)がサンプル数に占める割合
雇用主から個別のキャリア開発プランを提供されている未来対応型の働き手の割合(働き手全体では51%)
雇用主が提供するリーダーシップトレーニングに頻繁に参加している働き手の割合(働き手全体では57%)
働き手は、能力開発に関する雇用主の取り組みを信頼できなくなっているのでしょうか。多くの働き手は社内での異動を求めており、同じ部署に留まってスキル向上を希望する働き手は減少しています。
現在、76%の働き手が、企業は外部からの採用の前に組織内での異なる役割のために既存の従業員を優先的にトレーニングすべきだと考えており、これは2023年から12ポイントの増加となりました。しかし、リスキリングを得るために現在の職場に留まる意向を示したのはわずか9%で、これは昨年から7ポイント減少しました。
また、リスキリングをして現在の会社に留まる意向を示したのは10人に1人以下でした。これは、2023年から7ポイント減少しています。
インターナルモビリティを促進する戦略を導入していると回答した経営者は、わずか半数にとどまっています。
企業は社外の候補者を採用する前に、既存の働き手をトレーニングして組織内での役割変更に対処すべきと考えている働き手の割合(2023年から12ポイント上昇)
リスキリングをして現在の会社に留まる意向を示したのは10人に1人以下(2023年から7ポイント減少)
インターナルモビリティを促進する戦略を導入していると回答した経営者は、わずか半数
AIが浸透するにつれ、働き手への影響を企業が測定できるようになり、生産性の向上が明らかになりつつあります。現在、多くの働き手が創造的・戦略的な作業に割ける時間を増やしていますが、その潜在能力を最大限に活用するためには、より良いガイダンスが必要です。
調査によって、AIの活用で節約できる1日あたりの平均時間が1時間であることがわかりました。AIを活用して節約した時間を創造的な仕事に充てている働き手は28%、職場でAIを活用するためのトレーニングを受けたと回答したのはわずか25%でした。
AIの活用で節約できる1日あたりの平均時間
AIを活用して節約した時間を創造的な仕事に充てている働き手の割合
職場でAIを活用するためのトレーニングを受けた回答者の割合
1日に節約できる時間は平均1時間ですが、AI利用者の5分の1は、1日に多くて2時間は節約できていると回答しています。また、5%は1日あたり3〜4時間節約できていると回答していました(図1)。
AIの活用による時間の節約は、業界を問わず一貫して見られます。節約時間がもっとも多かったのは、エネルギー、公共事業、クリーンテクノロジー分野の働き手で、一日あたり平均75分節約していました。もっとも少なかったのは航空宇宙・防衛分野で、一日あたり平均52分でした。テクノロジー分野では1日あたり平均66分、製造業では平均62分、金融サービス分野では平均57分となっていました(図2)。
節約された時間はより大きな価値を生むために活用されていることが示唆されています。回答者の28%が、余った時間をクリエイティブな作業に充てていると答え、26%が戦略的思考に時間を割けるようになったと答えています。また、27%がAIのおかげでワークライフバランスが改善されたと回答しています(図3)。しかし、AIの活用によって節約された時間が、必ずしも生産的に使われているわけではない可能性も見られます。23%の回答者は、取り組んでいる仕事のボリュームは変わっていないと回答しており、21%は個人的な活動にその多くの時間を費やしていると答えています。
職場ではさまざまな変化が起きており、働き手のメンタルヘルスに配慮することは企業の優先事項です。企業は「AIによって特定の働き手だけが恩恵を受けるのではないか」という懸念を払しょくする必要があり、そのために包括性や持続可能な働き方へのコミットメントを示すことが求められます。
働き手の40%が、過去12カ月間に、過労によるバーンアウト(燃え尽き症候群)を経験しています。AIの影響を懸念して仕事への悪影響を受けた回答者では62%に増加します。
職場のリーダーが仕事へのAI導入リスクを理解できるだけのAIスキルと知識を持っていると確信している回答者は半数未満でした。スキルや経験の背後にある潜在力を見出してくれるリクルーターの人事的専門性を重視している回答者の割合は76%と、前年の64%から12ポイント増加しました。
過去12カ月間に、過労によるバーンアウト(燃え尽き症候群)を経験した働き手の割合。AIの影響を懸念して仕事への悪影響を受けた回答者では62%に増加
職場のリーダーが仕事へのAI導入リスクを理解できるだけのAIスキルと知識を持っていると確信している回答者は半数未満
スキルや経験の背後にある潜在力を見出してくれるリクルーターの人事的専門性を重視している回答者の割合(前年の64%から増加)
【調査概要】
調査人数:35,000人
調査実施国:アルゼンチン、ブラジル、カナダ、メキシコ、米国、ベルギー、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、トルコ、英国、オーストラリア、中国、インド、日本 計27カ国