東日本大震災の影響や「2012年問題」による大幅な労働力減少、終身雇用や年功序列型賃金制度の崩壊、加速するビジネスのグローバル化……。
環境が激変する今、労働市場で何が起きているのか、今後どのような新しい動きが出てくるのか。「今、そしてこれから」をレポートします。
世界的な景気後退が続く一方、2012年以降の定年退職者の増加や、リーマン・ショック後の採用抑制の反動などによって、国内の転職市場は盛り上がりを見せています。
特に回復基調が顕著なのは、経験値の高いエンジニアの求人。この背景には、スマートフォンや太陽電池など、伸びしろのある分野の市場拡大があります。また、復興に必要なインフラ関連の生産現場、増産対応に追われる自動車関連企業などでも求人が増加。医療・製薬など景気の影響を受けにくい業界も引き続き堅調です。他にも、アジア地域への新規進出や事業拡大で、小売業界や食品メーカーの求人も活発化しています。
とはいえ、専門性の高い人材の厳選採用の傾向が高まっているのも事実。そういった中、収入増が期待できない閉塞感が広がる国内を離れ、海外へ活路を見いだす転職者が増加しています。鈍化しているとはいえ、経済成長が見込めるアジア圏では、給与水準がここ数年で大幅に上昇。日系企業も現地の人員増強に動いています。ただし、シンガポールでは外国人の労働ビザ取得条件が引き上げられ、中国では外国人労働者の保険加入が義務付けられるなど、海外転職のハードルは少なからず上昇しており、今後の転職市場に影響を及ぼす要素も見え隠れしています。