大学の秋入学で採用はどう変わるかー小島貴子氏(キャリアカウンセラー/東洋大学 グローバルキャリア教育センター 副センター長)

秋入学論議を契機に教育界と産業界の国際化について考える

秋入学、私はこう考える(2)
キャリアカウンセラー/東洋大学 グローバルキャリア教育センター 副センター長 小島貴子氏

「空白の時間」によって視野を広げることが可能になる

秋入学の最大の問題点といわれるギャップイヤーですが、私はむしろ、高校から大学へ、大学から社会へという移行期において自由な時間ができることは、学生にとって大きなメリットになると考えています。

この期間は、自分がこれから勉強したいことや、社会に出てからのキャリアをじっくりと考えられる時間であり、ボランティアやインターンシップによって視野を広げることができる期間です。必ず何かをしなければならない、ということではありません。自分に向き合うだけでも十分。そこから次の何かが見えるのですから。

人が生きていくために必要なのは、自分は自分でいいと考えられる「自己肯定」の感覚です。それはテストのような相対評価によって育まれるものではなく、自分について考察し、己を受け入れることによって生まれるものです。「何者でもない時間」が与えられることで、若者は自分を肯定する余裕を持てるようになると私は思います。

グローバル化の進展によって企業の採用が国内で完結するものでなくなっている以上、従来の新卒一括採用というあり方は早晩変わっていかざるを得ません。ここ数年すでにこの傾向は顕著です。学生の立場からすると、就職活動のライバルは、日本人だけではなくなるということです。このような環境で学生に必要とされるのは、試験の点数や高い面接テクニックではなく、論理的に考える能力や自分自身の生き方を自ら決める力です。

もちろん、そうした力は秋入学を導入し、大学に国際的な環境を作り出すことによってのみ育成されるものではありません。たとえば、大学1~2年生時にロジカルシンキング(論理的思考力)をしっかり学ぶカリキュラムを策定する、あるいは、教育内容を正解主義の学習から思考力を養う学習に変えていくなど、トータルな教育改革とセットにしなければ、秋入学の効果はないと私は考えます。今後は、そのような明確な特徴を備えた大学を、学生は意識的に選んでいくことになるでしょう。

小島貴子氏91年より埼玉県庁にて職業訓練生の就職支援を行い、7年連続で就職率100%を達成。立教大学勤務を経て、2011年より東洋大学准教授。多数の企業で採用・人材育成コンサルタントを務める。

VOL.26特集:大学の秋入学で採用はどう変わるか

秋入学論議を契機に教育界と産業界の国際化について考える

導入記事

秋入学、私はこう考える

人事担当者670 名に聞いた “大学の秋入学が採用に与える影響は?”