人が生きていくために必要なのは、自分は自分でいいと考えられる「自己肯定」の感覚です。それはテストのような相対評価によって育まれるものではなく、自分について考察し、己を受け入れることによって生まれるものです。「何者でもない時間」が与えられることで、若者は自分を肯定する余裕を持てるようになると私は思います。
グローバル化の進展によって企業の採用が国内で完結するものでなくなっている以上、従来の新卒一括採用というあり方は早晩変わっていかざるを得ません。ここ数年すでにこの傾向は顕著です。学生の立場からすると、就職活動のライバルは、日本人だけではなくなるということです。このような環境で学生に必要とされるのは、試験の点数や高い面接テクニックではなく、論理的に考える能力や自分自身の生き方を自ら決める力です。
もちろん、そうした力は秋入学を導入し、大学に国際的な環境を作り出すことによってのみ育成されるものではありません。たとえば、大学1~2年生時にロジカルシンキング(論理的思考力)をしっかり学ぶカリキュラムを策定する、あるいは、教育内容を正解主義の学習から思考力を養う学習に変えていくなど、トータルな教育改革とセットにしなければ、秋入学の効果はないと私は考えます。今後は、そのような明確な特徴を備えた大学を、学生は意識的に選んでいくことになるでしょう。