【取材協力】早乙女 真(NTTデータ経営研究所 情報戦略コンサルティング本部/アソシエイトパートナー)
比較的単純な業務を外部委託することによって、企業の主たる業務に社内の資源を集中させることができます。近年のグローバル競争の激化によって、特にこの視点は重要視されています。
現在の労働者派遣法では、法令で定められた「26業務」以外の自由化業務(一般派遣)の受け入れ期間は、原則1年、最長3年以内で、その期間に達した派遣社員については、企業側は直接雇用とするか、契約を終了し別の方法に切り替えるかのいずれかを、選択する必要があります。
しかし、「人」に業務がつくのではなく、「業務単位で組織を構成する」=アウトソーシングという認識を変えることで、その派遣社員が担っていた業務が含まれる事業単位をそのまま外部に委託するという新しい選択が広がります。また、外部委託化=法人対法人の契約形態にすることで、より強固な体制にすることができ、これによって、コンプライアンスの徹底にもつながります。
先に挙げた「コストダウン型アウトソーシング」がこれに当たります。たとえば、施設運用をスタッフと設備をもつ事業者にアウトソースすれば、運用業務のコストを抑えることができます。
典型的な方法であるオフショアやニアショア以外に、「個人のマルチスキル化」、つまり、一人が複数の業務に対応できるスキルを身に付けることで、業務の効率化を図るといった方法もあります。
前述した「付加価値の獲得」がほぼこれに該当します。組織にない、あるいは不足しているノウハウや特殊スキルを外部に求めることで、商品やサービスのブラッシュアップ、開発などを推進します。
特定の業務を特定の社員が長期間担うことによって、「業務の属人化」が発生する可能性があります。このリスクを回避するには、第三者でも容易に理解できる形に業務内容を「標準化」するのが有効な手段であり、その一つがアウトソーシングです。外部事業者に業務を委託する過程で、業務を「見える化」し、不必要な業務を顕在化させることで、業務全体のスリム化が期待できます。