高い税負担ながら手厚い社会保障、フレキシブルな働き方、新ジャンルでのビジネスの立ち上げが続く市場――。
国民一人あたりのGDP調査でも常に上位にあがり、世界から注目を集める北欧各国。いくつかのテーマに分けて探ってみる。
社会保障といえば、日本では年金、医療、介護など「引退世代」のイメージが強い。しかし北欧の社会保障支出は、上記の割合は50%程度。残りは、保育や教育、子どもの医療、職業訓練、失業保険、育児休暇中の手当など「現役世代向け」に充てられている。このため、現役世代も社会保険と福祉制度の重要性を痛感している。
「スウェーデン人は、28~34%の地方所得税(日本でいう住民税)、最高25%の付加価値税(消費税)の“高負担”に抵抗がありません。企業が進化し続け、国際競争に勝ち抜き、経済成長しないと、社会保障が支えられないという危機意識を企業と国民と政府の3者が強く認識しているからです」と湯元氏は言う。なぜ全員で危機感を共有できるのか。それは過去何度も、実際の経済危機に直面した苦しい時代があり、そこからさまざまなことを学んだからだ。
「オイルショック、バブル崩壊にリーマンショックと、世界中で経済が低迷した時代、北欧経済も同様に壊滅的な打撃を受けてきました。その度に、内需依存では高成長を望みにくい北欧諸国は、輸出で国を支えざるをえないと認識してきました。企業の国際競争力を高めるため、スウェーデンはあえて法人税を50%台から26%に下げたほどです」。
企業と国民と政府がそれぞれの役割を認識し、お互いに高めてゆく必要性=利害が一致している──その強みが、高負担高福祉を支える鍵だ。