VOL.48 特集:2016年の雇用と労働

働き方、市場動向、法改正の影響は?
キーワードで探る2016年の日本② 市場動向

Vistas Adecco年始号恒例の、キーワードで見る今年の雇用と労働。
今回は、「働き方」「市場動向」「法改正」の3つをクローズアップし、それぞれの分野で注目されるであろう項目を識者とともに選び、2016年を見通してみた。

KeyWord 世界各国が抱える
若年失業対策

EUでは「毎年、若者の失業対策が恒例行事のように話題になる」と濱口氏。若年(15~24歳)失業率の高さは世界的な課題となっているが、EU27カ国平均で見ると、その失業率は20%を超える。新卒者5人に1人は職に就けない状況だ(2013年・EU統計局)。「新卒者には経験とスキルがないため、その状態のままでは雇われないというのが欧米における考え方です。一方、日本は景気が悪くなければ、新卒者のほぼ全員が雇われます。理由は新卒一括採用があるからです」(濱口氏)。スキルがなくても上司がイチから鍛えるため、欧米諸国と比べると日本の若者は失業しないで済む、というわけだ。

しかしEUでも例外的に10%以下と、若年失業率が低い国がある。ドイツ、スイスなどだ。なぜドイツは若年失業率が低いのか?「『デュアル職業訓練』という制度があるからです。ドイツではこの制度のもと、学校の正規の単位として学生が企業で就業しています。この就業も学校の授業の一部と認定され、卒業後は働いた企業に戦力として雇ってもらえます。この制度が普及しているから、ドイツなどは例外的に若年失業率が低いのです」と濱口氏は説明する。

デュアル職業訓練の公認職種は、営業補助、広報アシスタント、小売、情報技術者、貿易事務など350種もある。企業実務は週3~4日で、働く期間中は手当も支給される。この訓練への参加は義務ではないが、若者の過半数が参加している。一方、新卒一括採用方式の日本は、在学中は学生生活に専念できる長所があるが、短所も指摘される。「短期選考ゆえミスマッチの問題もありますが、最大の問題は年ごとの景気で採用枠が変わる点。新卒で運悪く就職ができないと、中年までフリーターになってしまうという恐れがあります。また、一社だけの閉塞的な教育制度で人財を育てていたらグローバルな人財に育たず、将来的には企業の国際競争力が弱まってしまいます。そうなったら、新卒一括採用は廃れていくことも考えられます」(山本氏)

その一括採用も「日本も大学が信頼できる企業と契約などを交わし、アルバイトやインターンを管理、正規の授業科目にしていくのがいいと思います。そうなれば年によって変わる就活スケジュールは安定し、ブラックバイトの解決にもつながります」と濱口氏は提言する。

【図3】 若年失業率の変化(失業率が低い3カ国と高い5カ国の比較)

独立行政法人労働政策研究・研修機構統括研究員
濱口桂一郎氏

慶應義塾大学商学部教授
山本勲氏

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