VOL.49 特集:「人財獲得競争時代」を勝ち抜く経営力

Instance 世界規模の「適材適所」を目指す仕組みを構築株式会社日立製作所

2013年度からの中期経営計画で「人財のグローバル化」という改革に乗り出した日立製作所。以来、全世界のグループ会社約900社での最適人財配置を目標とするグローバルな人事管理の仕組みを構築してきた。評価制度から育成システムまでをも再構築するという抜本改革に踏み切った背景を、同社人財統括本部の飯塚毅氏が説明する。「"今後の成長の源泉は海外"という明確な方針のもと、当社はグローバル・メジャー・プレーヤーを目指しています。そのためには海外でのさらなる事業拡大が不可欠です。国外売上高比率50%超を目標に、海外での年間1万人規模の人員強化と世界規模での適材適所の配置を目指す人事管理を導入することになったのです」

全世界の人事データと評価制度を統一

具体的な改革の仕組みとなるのが「グループ・グローバル共通人財マネジメント」の導入だ。「以前はグローバルレベルでのマネジメントの仕組みがなく、現地法人ごとに人事制度も業務プロセスもバラバラの状態でした。しかし年に1万人も人財が増えると、それでは限界があったのです」

人財統括本部
グローバルトータルリワード部
部長
飯塚 毅 氏

グローバル共通人財マネジメントの第1弾は、工場作業員を除く国内外のグループ社員25万人を対象とする「グローバル人財データベース」の構築。これはどの職種(専門)の人が世界のどこに何人いるかを可視化するものだ。第2弾として導入したのが「グローバル・グレード」。各職種の人財がどのようなレベルの仕事に就いているのかを分類したものだ。そして14年度に導入した「グローバル・パフォーマンス・マネジメント」は、評価制度において個人目標と事業目標を連動させるための仕組みとなっている。「評価制度は、目標管理と毎年社長が決めるコンピテンシー(求められる行動特性)を合わせたものへと変更されました。この制度の本質は、上司と部下の間でコミュニケーションを活発化させること。個々人のパフォーマンスひいては組織力の向上が狙いです」

また国内の採用戦略では新卒採用の10%をグローバル人財(日本の大学を卒業する外国人、海外の大学を卒業する日本人など)とする目標も掲げられた。「海外の大学へ行っての採用活動や、海外留学中の日本人学生が集まるキャリアフォーラムに参加するなど、本社でのグローバル人財の採用は着実に増えています。またグローバル規模の採用では、現地法人の採用強化と企業買収によって、人員を確保しています」

社会貢献型の事業が多いインフラ事業と、ITを併せ持つ数少ない企業であることなどがグローバル人財を引き寄せているという。さらに国内社員の育成制度もグローバルに適用する内容に刷新した。「将来のリーダー(タレント人財)500人を全世界から選抜して育成する制度の導入を始め、国内の研修所のカリキュラムもグローバル共通のものへと変更中です」

さらなるグローバル化へ事業構造を転換

このようにグローバル化を加速させる同社だが、すでに鉄道事業の本社は英国にあり、外国人トップのもと日本人も多く駐在。グローバル化は進んでいるという。「他の事業部でも海外の外国人社員と国内の日本人社員が一緒にプロジェクトチームを作って仕事を進めることが盛んになっています。私の現在の上司も外国人で、月に一度日本で打ち合わせをしています」

グローバル化の進展に伴い、すでに新たな目標も生まれている。「私たちがフロント機能と呼んでいる、事業領域を横断してお客様の問題解決を図る組織機能の強化がこれからの戦略です。グローバルとなった人事システムを使って、この新しい戦略を実現するための人財の確保と育成を行っていくことが今後の目標です」