社員同士の親密な対話を重視するパフォーマンス・マネジメントには、実は「ニューロサイエンス(神経科学)」の研究成果が応用されています。ニューロサイエンスは、人間の心理、意識、感情や認知などを、脳の機能や神経細胞の働きから研究する学問です。
例えば、脳内のどの領域が活性化しているかを、血液中の酸素の量を画像化して分析できる「機能的磁気共鳴画像法(fMRI)」という技術があります。これを応用すれば、仕事上で遭遇しうるさまざまな場面で、働く人々の脳がどう反応するかを調べることもできます。
人の心のありようを「マインドセット」と呼びます。スタンフォード大学のキャロル・S・ドゥエック教授は、人間には「フィックスドマインドセット」と「グロースマインドセット」という2つの対照的な心のありようがあると提唱し、人財開発の分野でも注目を集めています。前者を持つ人は、「自分の能力は固定的で変わらない」と考え、他人の評価が気になり、失敗したくないという意識が強く、後者を持つ人は「努力によって能力は伸ばせる」と考え、他人や失敗を気にせず、積極的にチャレンジする傾向があるとしています。
ニューロサイエンスの研究などから、会社の組織風土がこうしたマインドセットに影響を及ぼすことが分かり始めています。近年、一部の米国企業が社員をレーティングする人事評価制度を見直し始めた一因でもあります。
人事やマネジメントと一見無縁に思えるニューロサイエンスがこの分野でどんな成果をもたらすのか、大変興味深いところです。
株式会社ヒューマンバリュー 取締役 主任研究員 川口大輔氏