2つめのミスマッチは、ビジネスを進めるうえでの基盤となるような価値観の大きな変化に、企業が対応できていないということです。これは、パソコンに喩えるとわかりやすい。人財教育の方向性には、「新たなアプリケーションをインストールすること」と「OSを最新バージョンにアップデートすること」の2つがあります。前者は、多くのアプリをインストールしたパソコンほどたくさんの種類の作業がこなせるのと同様に、ビジネススキルを数多く習得していけば仕事のできる人財に育つはず、という考えに基づく教育です。
こちらも大切ですが、これからより重要になるのは後者です。いくらハードディスクの容量が大きくて、アプリをたくさんインストールしても、OSが何年も前の古いバージョンのままでは、今の時代では役に立ちません。ビジネススキルの前提となる価値観や判断基準を最新の社会情勢に合わせて変えていくことは、企業活動にとって極めて重要です。人財教育においても欠かせません。
例えば、新人研修で必ず教わる「名刺交換」「お辞儀の仕方」「上座・下座」といったビジネスマナーは必要なアプリですが、その通りやっていれば、周囲から信頼されるだろうという意識では、グローバル化の中では通用しないでしょう。マナーをスキルだけで身に着けるのではなく、「いま接している相手はどのような対応を喜んでくれるだろうか」と考えようとする意識(OS)が重要なのです。
本日は、若い世代の人財分析や最先端の人事マネジメントの研究に取り組んでおられる川上先生にお会いできて、とてもわくわくしています。現代はVUCA(Volatility(変動)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧))といわれる変化の激しい時代ですが、ここ最近の若者の意識変化や、企業がそれに応えるうえでの有機的な対応としてのインターンシップについて、お話をお聞かせください。