社会を少しでも良くしていきたい。そんな気持ちで仕事に臨めば、理解してくれる人と必ず出会えます。
会社と個人のあるべき関係を教えてくれた恩人
会社や社会に初めて関わったのは、大学時代にリクルートでアルバイトをした時のことでした。当時、リクルートで編集の仕事をしていた松永真理さんは、私にこんなことを教えてくれました。会社イコール自分ではない。会社と適切な距離を保ち、自分を活かしながら会社にも貢献できるのが、正しい社会人のあり方だ──。それは強烈な言葉でした。私はその後、大学を卒業して社会人人生をスタートさせることになりますが、いつも「個人として自立しながら、会社とより良い関係を結び、社会の役に立つ」ということを自分の原則にしてきたように思います。
松永さんは、後にNTTドコモに私を呼んでくれ、ともにiモードビジネスをゼロから作り上げていくことになります。まさに、私の人生の転機を作ってくれた恩人です。
iモードを成功に導いた2人の大器との出会い
私が入社した当時にNTTドコモの社長だった大星公二さんと、私の上司だった啓一さん。このお2人との出会いも、私の人生を大きく左右しました。
大星さんは、経営者として、本質を見極める力をお持ちの方でした。入社して間もない頃、NTTドコモに、当時発足したばかりだったJリーグチームのスポンサーにならないかという話をいただいたのですが、この案件を決定する会議で大星さんがおっしゃった言葉は、今でも耳に残っています。「スポンサーにはなります。しかし、ユニホームにNTTドコモの社名を入れないでください」。理由はこうです。NTTドコモは連戦連勝でなければならない。一方、サッカーチームが勝ち続けることはどんなに強いチームでも不可能である。負ける可能性がある以上、NTTドコモの名前を使うことはできない──。ビジネスの本質を見ている方だと思いました。「スポンサーになるからには、企業名を露出すべし」という常識に捉われないすばらしい経営者だと思いました。