北京ではここ数年、日本語の「弁当」を語源として生まれた「便当」(ビェン・ダン)という言葉がすっかり定着しました。「便当」はご飯に3~4種類のおかずを詰め合わせたもので、見た目は日本の「弁当」とそっくり。日系のコンビニエンスストアが中国に進出して、さまざまな「便当」を売り出し、その普及を大きく後押ししています。
多いのは、ご飯に炒め物が2種類入っているもの、例えば豚肉のピリ辛炒めと、なすとピーマンの炒め物、といった「便当」です。値段は、もっとも一般的なコンビニの「便当」で約15元(約255円)、ビジネスエリアで比較的高収入のビジネスパーソン向けに売られているものは40~60元(約700~1000円)ほどで、副食に和え物なども加わり、おかずが3~5種類に増えます。
また、激しい物価上昇の中、節約志向や食の安全への懸念などから、自分で「便当」を作って持ってくる人も増えています。今、多くの職場には電子レンジが置かれ、ランチタイムになると「便当」を温める風景が見られます。男性は自分のデスクで食べる人をよく見かけますが、女性は職場のテーブルに集まってみんなで食べることが多いようです。
「便当」という言葉が浸透する以前、中国には「盒飯」(フ・ファン)という言葉がありました。これは発泡スチロールの容器に詰めたご飯の上に、1種類のみの炒め物がかけてあるもの。10年ほど前まではランチの定番でしたが、簡便な「盒飯」からおかずが豊富な「便当」へ、中国ではランチも進化しているのです。
(北京在住 ライター・原口純子)