厚生労働省の労働政策審議会が、労働者派遣制度を見直す報告書をまとめ、2015年春から適用される可能性が高まっています。その見直しのポイントを社会保険労務士の岡田良則氏に伺いました。
厚生労働省の労働政策審議会が、労働者派遣制度を見直す報告書をまとめ、2015年春から適用される可能性が高まっています。その見直しのポイントを社会保険労務士の岡田良則氏に伺いました。
今回の改正案のポイントは、期間制限の在り方が変わることです。これまで「専門26業務」では、同一の派遣労働者に期間の制限なく仕事を任せることができましたが、それ以外の業務(「自由化業務」)については、派遣期間に3年の上限がありました。今回の見直しでは、専門26業務と自由化業務の区分けを廃止し、「同じ業務では最長3年」としていたものを、「同じ労働者では最長3年」と、派遣期間の上限を定めています。つまり、すべての業務において、同一の業務で3年を超えて、派遣労働者を受け入れる場合、自社の労使の委員会による意見聴取を行うことを条件に、受け入れを継続することができます。「たとえばある人が気に入ったから長期間働いてほしいという場合は、3年を区切りとして直接雇用に切り替えるなどの検討をしていく必要があります」(岡田氏)。なお、派遣元と無期契約を締結する「無期雇用派遣」では、「3年」という期間の制限は設けられません。
今回の改正の方向性のひとつに、「雇用の安定措置をとること」というものがあります。同じ仕事で3年経った派遣労働者については、派遣元に対し、「①派遣先への直接雇用の依頼」「②新たな就業機会(派遣先)の提供」「③派遣元事業主において無期雇用」など、雇用が安定するよう取り組むことを義務付けます。
一方、派遣先に対しても、派遣期間の上限に近づく派遣労働者について、社内募集の情報提供や、労働契約の申し込みをするよう努めるといった役割が与えられます。さらに、派遣労働者のキャリアアップのための教育訓練の実施を派遣元の責務に追加しています。「今回の見直しで、今までのルールが変わることは確かだと思います。今までは、『この業務は専門26業務に入るか入らないのか』という点から派遣元との話し合いが始まっていましたが、今後は、『Aさんにどういった業務をどの程度(期間など)お願いしたいか』『場合によっては直接雇用への移行もあるのか』といったことまで視野に入れて、派遣の受け入れを検討する必要が出てくるでしょう」(岡田氏)
厚生労働省の労働政策審議会による案。有期雇用派遣の場合、派遣就労は3年が上限だが、
3年が経過した際、派遣元は派遣労働者の希望を聴取し、雇用安定措置をとらなければならない。