日本を含む世界9カ国において、企業と働き手を対象にした能力開発に関するグローバル調査を実施し、その結果をまとめた報告書「将来を見据えた能力開発:技術革新のスピードに合わせた能力開発の推進」から、諸外国とは違う日本ならではの傾向が見られた点を、ここでは取り上げたい。
技術変革により、職を失うことへの不安は、日本は「非常に不安」と「やや不安」で32%と低めである。
また、9カ国の回答者の66%が「自分の仕事が定期的に変化する」と予想するなか、最もスピードが速いと感じているのはインドで、日本は最も遅い。
過去10年の間に新たなスキル習得について検討したことがある労働者は、世界全体では約87%に達するが、日本は63%と低く、中でもデジタルスキルの習得で他国に後れを取っており、世界平均39%に対し、日本はわずか18%だ。中国、インドのデジタル志向の高さに比べると大きな開きがある。
自分のスキル不足を判断するための材料は、日本では、「自分で行った調査」が約42%で、「会社の人事考課」の約27%と数値の開きが大きく、こういった傾向は他国にはない。
また、日本以外の国の労働者は、雇用主が訓練研修を実施することを望んでいるのに対し、日本はスキル向上の責任を負うのは自分自身と考える労働者が多い。
これらの結果は、会社依存ではなく、個人として自律して自身のスキル向上の必要性、およびその習得に責任を持つ姿勢を有しているといえるが、一方で危機意識が薄く、学習を実行していないことが見て取れる。
経営環境の変化のスピードが速まるなか、個人の知識や経験が陳腐化するスピードも速まっているはずだが、それを感じにくい日本。
企業の競争力を維持するためにも、能力獲得のための行動が企業にも労働者にも求められる。