ニューノーマル時代の新しい働き方が定着しつつあり、これまでとは違った課題も顕在化している。2021年にAdecco Groupは、働き方についての大規模なグローバル調査を実施。25カ国14,800人に調査して分析した結果、パンデミック後の働き方について特長的な行動様式や考え方などの傾向があることがわかった。その5つのポイントをここで紹介しよう。
Adecco Groupは2020年に続き、新型コロナウイルスのパンデミックで、仕事に対する姿勢や働き方がどう変化したかを調査した「“日常”の再定義:新たな時代の働き方とは(2021年版)」の結果を公表した。調査は世界25カ国のオフィスワーカー14,800人を対象に実施された。
新型コロナウイルス感染症の拡大と縮小が繰り返されるなかで、リモートワークとオフィス勤務を組み合わせたハイブリッドな働き方のスタイルが、従業員や経営陣からも支持を得ている。世界的な傾向としては、働き手はリモートワークとオフィス勤務を半々の割合で続けたいと考えており、「ネクストノーマルの働き方は、ハイブリット型ワークスタイル」ともいえそうだ。日本はリモートワークで働きたいと回答した割合が64%で、25カ国中1位であった。ハイブリッド勤務による柔軟な働き方は働き手にとっての新たな常識となりつつあり、子育て世代や障がいがある人など、さまざまなバックグラウンドを持つ人にとっても多様な働き方を選択できるメリットは大きい。ハイブリッド勤務の環境下において、懸念の一つになっているのが生産性である。調査結果からは、ハイブリッド勤務に移行しても生産性は低下していないと考える人の割合がグローバル平均では82%、日本は70%であった。さらに海外では時間単位で労働を評価することに疑問を感じる声も多い。グローバルでは働き手の73%が、企業は労働時間ではなく成果に基づいて業績を評価すべきだと答えている。
タイムマネジメントやワークライフバランスが向上したため、グローバルでは82%がハイブリッドな働き方でも生産性は低下しないと回答。労働時間ではなく、成果や結果で評価されることを求める働き手やリーダーが増えているが、グローバルと日本の結果には大きな差がある。
ただし日本は53%であり、成果主義の考え方においては差がある。柔軟な働き方への移行が進むなか、ハイブリッド勤務における「生産性向上と成果主義」は今まで以上に求められるだろう。
過去1年で、過労やバーンアウトを経験した割合
課題として浮き彫りになったのがメンタルヘルスの低下だ。なかでも、若いリーダーの半数以上がバーンアウト(燃え尽き症候群)を経験しており、大きな懸念になっている。さらにマネージャーの51%が、従業員が過労やバーンアウトに陥っていないかを見極めるのは容易ではないと感じている。リモートワーク環境では従業員のメンタル面での問題は把握しづらいというデメリットがあり、部下の悩みに耳を傾けるためのコーチングや仕組みづくりなどの対処が急がれる。コロナ禍では、人間関係、モチベーション、企業文化に対する共感が低下している。またこうした問題において、リーダーと一般社員の見解には大きな隔たりがあり、断絶は会社の結束力低下への懸念となっている。例えば、リスキリングのための時間に関して、自社が効果的に投資していると考えているのは、一般社員が31%にとどまっているのに対して、リーダーは69%がサポートしていると考えている。やる気を高める能力開発やメンタルヘルスの把握など、ほかの項目においてもリーダーと一般社員の視点の乖離が大きく、働き手の分断を解消するためのリーダーシップの重要性が問われている。
自分の上司が期待通りまたは期待以上だったと回答した割合
パンデミック後の労働環境で重要だと考える要素[上位10項目]
最後に今回の調査では、多くの人が働き方を見直していることがわかった。パンデミック後に重視する働き方として、働き手の80%が、今後最も重要なこととして「ワークライフバランスを維持できること」を挙げている。そのほかの項目として、雇用の安定、主体性、企業文化、ウェルビーイング、能力開発の重要性も高い。働き手が抱く新たな期待をしっかり受け止め、企業はネクストノーマルへ向け新たな働き方について再評価を行う時期にきている。