現在の日本の新卒一括採用のメリットとして、人材教育を同じタイミングで行えることに加え、採用の際に「比較しやすい」こと、同時期に入社することによって、「横のつながり=連帯感」を醸成しやすいことなどが挙げられます。転職市場が活発化している現在でも、「同期」という結びつきは重要視されており、もともと「繋がり」に重きを置く日本人にとっては、仕事を進めるうえでの潤滑油になると考えられています。
秋入学のメリットとして、グローバルなセンスを身に付けた人材の輩出が挙げられます。それは期待すべきことですが、必ずしもそうした人材を必要とする企業ばかりではないと、私は考えています。もちろん、企業は主体性のある人材を必要としていますが、組織の中で協力・連携しながら働くことができるという点を重視しているケースも少なくないと思います。
一方、秋入学の議論が活発になる機会に、各企業は自社の採用方針や採用方法、社員の育成体制を改めて根本から見直すとよいと思います。これは秋入学の動きを前向きにとらえるきっかけにもなるのではないでしょうか。
現在、秋採用をめぐる議論は、多くの場合「総論」ですが、各企業の採用活動はあくまで「各論」の世界です。その点で、メディアの論調と企業の人事部の現実的な感覚には、まだ開きがあります。今後、企業の意見も交え、より一層の議論を重ねることで、実現の可能性が高まっていくのではないか。そんな実感を私は持っています。