従業員の働きがいがすべての土台 一人ひとりの成長が業績につながるー日本マクドナルド株式会社

“人を規制する”人事から“人を育てる”人事へ

Case Study1 実践事例従業員の働きがいがすべての土台 一人ひとりの成長が業績につながる 日本マクドナルド株式会社

90%を超える従業員満足度

働きがいを業績に直結させる明確な「方程式」を持っているのが、日本マクドナルドだ。従業員が働きがいを持てる環境であれば、ES(従業員満足度)が上がる。ES の向上は、離職率を低下させる。離職率が下がることによって、全国の店舗におけるサービスレベルが安定し、結果、CS(顧客満足度)が上がる。CSの向上は、最終的には店舗の売り上げを増加させる──。それがその方程式である。

「年に一度、全国約16万人のアルバイトスタッフと3300人を超える全社員を対象にしたES調査を行っていますが、2011年には、全体で満足度91%という結果が出ています」

そう説明するのは、コーポレートリレーション本部の蟹谷賢次さん。資料を見ると、一般アルバイト職で満足度92%、上級アルバイト職で85%、全国3300店舗の店長で91%と、高い数値を示している。注目すべきは、5年前の水準から大幅にアップしていることだ。「ESの向上に比例して、全国店舗の客数も、ほぼ毎年、前年比でプラスとなっています。ESと売り上げには、明確な相関関係があるのです」

コーポレートリレーション本部の蟹谷賢次さん。「マクドナルドは“ピープルビジネス”を追求します」と話す。

緻密な評価システムとインナーコミュニケーション

従業員が「成長している」という実感を持つことと、仕事への高いモチベーションを維持すること。働きがいはその二つによって生まれると蟹谷氏は話す。

従業員の成長を促すための手段の一つが緻密な評価システムだ。評価・トレーニングされるのは、スキル面のみならず、習得した知識を成果につなげる行動特性も含まれる。評価項目は、アルバイトが「顧客指向性」「チームワーク」など、社員が「戦略的な計画・実践」「影響力」「結果を出すための行動」など。社員とアルバイトそれぞれが、マクドナルド創業以来の理念である「QSC(Quality、Service、Cleanliness)」に照らして現状を自己評価し、それを上司による客観評価と合わせて、目標を明確にしていく。

一方、モチベーションを醸成するための取り組みが、同社独自のインナーコミュニケーションである。その柱は3つ、ウェブ、紙媒体、イベントだ。

全ての従業員用のイントラネット「WEBSMILE」は、会社側から商品情報やプロモーション情報、顧客の声などを発信するだけでなく、スタッフの誰もが自分が働く店舗の情報などを書き込むことができ、誰もがいつでも相互にコミュニケーションできる仕組みになっている。

紙媒体は、社員向けの『BIZ SMILE』と、アルバイト向けの『SMILE』の2 誌を発行。雑誌に登場することが、従業員の大きなモチベーションとなっている。

アルバイト向けの紙媒体『SMILE』は年に4回程度発行している。全国のクルーから、日々の業務で心がけていることや、成長を感じた瞬間などを取材している。

イベントは、全国の店長を集めて開催する「ジャパンコンベンション」、アルバイトスタッフが業務スキルを競い合って16万人の頂点を決める「オール・ジャパン・クルー・コンテスト」といった大規模な催しのほか、エリアごとに開催される小規模なフォーラムなど多彩だ。
「『人』に対して、費用と時間を惜しみなく投資すること。それがマクドナルドの強みになると私たちは信じています」

(写真左)「オール・ジャパン・クルー・コンテスト」では、店舗を代表する6名が1組になり技能を競う。店内戦から全国大会まで、5回にわたる大会を勝ち抜いたチームが優勝者になる。
(写真右)全国の店長が集まる「ジャパンコンベンション」。