欧米企業にみる人事評価制度の現状【前半】

企業の人事評価制度について考える

90年代以降、導入が相次いだ成果主義。しかし日本の企業においては、成果主義の評価制度が機能しないケースが少なくない。
成果主義はなぜうまくいかないのか。成果主義にはどのような特徴があるのか。
さらに今後、企業の人事評価制度が向かうべき方向は──。
東京大学教授の大湾秀雄氏と、タワーズワトソンの片桐一郎氏に、これら一連の話をうかがった。

2.欧米企業にみる評価制度の現状 (1/2)

「人」ではなく「仕事」を評価する

タワーズワトソンの片桐氏によれば、欧米企業における評価制度の特徴は「人」ではなく、「仕事」を評価することだという。「be」、すなわちその人が「どのような能力や志向をもっているか」ではなく、「do」、すなわちその人が「どのようなことを成し遂げたか」を重視し、それに応じて賃金を支払うのが欧米、とりわけ米国流だ。それが英語で「Pay for performance」、日本語で「成果主義」と呼ばれる考え方である。日本企業にこのような考え方が馴染みにくいのは、日本では長期雇用の慣習が根づいており、長い時間をかけてその人の能力を伸ばしていくという観点で社員を評価する文化があるためだ。

ただし欧米においても、仕事のアウトプットを厳格に査定する成果主義が、すべての社員に適応されているわけではない。
「たとえばアメリカでは、マネジャークラスと現場の社員の評価基準が明確に分かれています。成果によって収入が大きく異なるのはマネジャー以上のクラスで、現場の社員には職務に応じた給料が支払われるケースがほとんどです」(片桐氏)

成果主義の対象はリーダー層のみ

その仕組みを表しているのが図2である。これはタワーズワトソンがクライアントに提供している社員評価ツールで、「GGS(グローバル・グレーディング・システム)」と呼ばれているものだ。アメリカの企業の評価システムをベースにして作られたツールである。

まず社員の職階を見ていただきたい。下の段から「プロダクション、オペレーション」「ビジネスサポート」となっていて、一番上の段は「エグゼクティブ、シニアマネジメント・CEO」となっている。片桐氏の言うマネジャークラスは、この中のマネジャー、プロフェッショナルの一部以上のことで、日本企業では課長以上ということになる。

それぞれを評価する横軸は1から25までの段階があり、大きく「職務」「技能」「専門的知識」「リーダーシップ」「部門戦略」「ビジネス戦略」に分類されている。このうち、いわゆる職務給の対象となるのが「職務」「技能」「専門的知識」の部分で、成果主義の対象となるのが「リーダーシップ」以上の段階ということになる。

【図2】 タワーズワトソンの評価フレーム