北欧に学ぶ「同一労働同一賃金を成立させる 他国に類を見ない労使交渉」とは

組織と人の今とこれから

高い税負担ながら手厚い社会保障、フレキシブルな働き方、新ジャンルでのビジネスの立ち上げが続く市場――。
国民一人あたりのGDP調査でも常に上位にあがり、世界から注目を集める北欧各国。いくつかのテーマに分けて探ってみる。

Wage 3.同一労働同一賃金を成立させる 他国に類を見ない労使交渉

北欧は労働組合の組織率が高いことでも有名だ。日本の組合の組織率が18%程度、米国のそれが11%程度なのに対し、スウェーデンは実に70%近くに達する。しかも経営者、労働者ともに共通の利益を追求する労使協調の形で成り立っており、労働市場のルールは労使協定で決めるのが特徴だ。賃金も労使が3年ごとに話し合って決定する。この際、企業間、産業間の賃金格差を縮小する「連帯賃金制度」により、「同一労働同一賃金」に基づいた賃金が決定する。「これにより、同一の職種内での賃金格差はなく、景気などの影響によって急激に賃金が下がることもありません」(湯元氏)

日本のような「最低賃金制」がないため、特定の賃金を支払えない企業は人員を確保できず淘汰される。その厳しさは、働く側も同じこと。年金は賃金と連動するため、老後を豊かにするために常にスキルアップや転職を意識せざるをえない。「こうした施策により低生産性部門から高生産性部門への労働移動を図り、国全体の生産性を上げているのです」(湯元氏)

【図2】スウェーデンの労使交渉 <企業側>Svenskt näringsliv(スウェーデン企業連盟)[小売・流通業、林業、医薬品業、建設業、サービス業、食品加工業、運輸業、製造業、繊維業、他]・スウェーデン自治体連合会[政府系雇用者庁] <労働者側>LO(ブルーカラー)[建設労働者組合/電気工組合/不動産管理業労働組合/林業労働者・印刷工組合/地方公務員組合/ホテル・レストラン従業員組合/塗装工組合/金属工組合/運輸業労働者組合、他]・TCO(ホワイトカラー)[教員組合/警察官組合/保険業従業員組合/小売流通・製造業組合/医療従事者組合/国家公務員組合/地方公務員組合、他]・SACO(大卒者)[法律・経済専門家組合/エコノミスト組合/作業療法士組合/理学療法士組合/大卒国家公務員組合/エンジニア組合/医師組合/大学教員組合/校長組合、他] それぞれの労働組合と経営団体は個別に団体交渉を行う (注)湯元健治・佐藤吉宗著『スウェーデン・パラドックス』より