加速する高齢化、上向きつつある景気――。
環境が変わるなか、雇用と労働市場にも変化の兆しが見受けられる。迎えた2014年、いったいどのように動くのか。日本型雇用はこのまま続くのか。
今年のキーワードとなりえる語句から探ってみた。
日雇い派遣の原則禁止など、いったんは規制強化の方向で改正がはかられた昨今の労働者派遣法。しかし2013年から再び規制緩和の動きが見られるようになっている。同年夏の、厚生労働省の有識者会議が出した報告書が議論の下地となっている。そのポイントはいくつかある。
一つは、「専門26種」という区分の撤廃。「派遣業務の契約は、原則として3年以内で、通訳や秘書など専門26業務に限ってはその制約がないというルールだったのが、『専門26業務』という区分そのものをなくそうという動きです。また働ける期限を見直す議論も起きています」(安藤氏)
二つ目は、「上限3年」のルールを見直すこと。有期雇用(契約)の派遣労働者の場合、3年を超える派遣では派遣先企業内で労使双方が同意すれば、同じ職場で派遣労働者を受け入れることができる。ただし3年ごとに人を交代させる必要がある。
また派遣労働者のキャリアアップを推進することが織り込まれた。さらに派遣事業を国の認可制にする案も盛り込まれるなど、派遣会社にとっては比較的厳しい内容の改正案となっている。
こうした動きについて濱口氏は、「かねて懸念していた『労働者をおきざりにした改正』ではなく、派遣労働者が仕事を得やすい環境にシフトするような方向での議論になっているのは望ましいことでしょう」と評価する。
安藤氏も、派遣会社が派遣登録者の職業能力開発や支援をする機能がますます求められるようになったことは正しい流れだと認める。さらに濱口氏、安藤氏が異口同音に話すのは日本における派遣会社数の多さ。今回の改正への流れが進むなかで、派遣会社の淘汰が起こると両氏とも指摘する。
2014年以降の派遣業界は、派遣社員の能力開発、研修システムの差で、市場に選ばれていく時代になりそうだ。
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1958年生まれ。東京大学法学部卒業後、労働省(当時)入省。欧州連合日本政府代表部一等書記官、東京大学客員教授、政策研究大学院大学教授を経て現職。
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1976年生まれ。東京大学大学院修了。政策研究大学院大学助教授などを経て現職。専門は契約理論、労働経済学。著書に『雇用社会の法と経済』など。