加速する高齢化、上向きつつある景気――。
環境が変わるなか、雇用と労働市場にも変化の兆しが見受けられる。迎えた2014年、いったいどのように動くのか。日本型雇用はこのまま続くのか。
今年のキーワードとなりえる語句から探ってみた。
年金の満額受給年齢が65歳に引き上げられることに伴い、2013年4月に「高年齢者雇用安定法」が改正。本人が希望すれば65歳まで雇用することが義務付けられることとなった。法令では、継続雇用制度の創設か定年の撤廃もしくは引き上げのいずれかの対応が要求されているが、実際に運用が始まった昨年は、定年の引き上げや撤廃に踏み切る企業は少なく、多くは嘱託や契約社員などの雇用形態で再雇用し賃金を引き下げる対応策を採用している。「いったん60歳で定年とし、それまでの3分の1程度の給与で再雇用する場合がほとんど」(濱口氏)だ。
また業務内容も「ある大手自動車メーカーでは、再雇用した人財に実業務とは異なるCSR的な活動(緑化活動など)を担当させているように、現役世代の仕事に影響することはほとんどない」(安藤氏)。それでもいまだに「シニア世代が優遇され、若年層にそのしわ寄せが来ている」と批判する声もある。だが濱口氏は、それはナンセンスだと喝破する。
「今後ますます、社会全体が高齢化して年金受給額が増えることは明白です。年金は現役世代の保険料で賄う賦課方式が基本ですから、年金を支えるためには、現役世代を増やすしかない。高齢者雇用に反対することは、年金を支える層を減らすことと同義。若者の負担がかえって増すだけです」(濱口氏)
もっとも今後「年金支給開始年齢は間違いなく、68歳、70歳と伸びていく」(濱口氏)。となれば、「60歳まで年功制で雇用し、年齢による賃金上昇形態を続けるには限界があります。
2014年からは前倒しで年功給の要素を減らし、成果による配分を行うなど、給与体系を変更していく必要が生じるでしょう」(濱口氏)
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1958年生まれ。東京大学法学部卒業後、労働省(当時)入省。欧州連合日本政府代表部一等書記官、東京大学客員教授、政策研究大学院大学教授を経て現職。
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1976年生まれ。東京大学大学院修了。政策研究大学院大学助教授などを経て現職。専門は契約理論、労働経済学。著書に『雇用社会の法と経済』など。