加速する高齢化、上向きつつある景気――。
環境が変わるなか、雇用と労働市場にも変化の兆しが見受けられる。迎えた2014年、いったいどのように動くのか。日本型雇用はこのまま続くのか。
今年のキーワードとなりえる語句から探ってみた。
ここ最近、女性の働き方に関する議論が活発化している。政府は「指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%程度とする」ことを目標に掲げた。また企業も女性社員が出産・育児と仕事を両立できる各種制度を整備。育休や短時間勤務制度(時短)、フレックス制などに加えて、託児所を完備し子連れで通勤できる会社も増えている。「制度としては、以前と比較すれば整備されつつあると思います」(濱口氏)。実際に、女性労働者の60%が第一子出産後に退職するという現象に歯止めがかかっている。
だが全体を見れば女性就業率は男性の80%にも及ばず、2013年の調査では8割の企業の女性管理職比率は1割以下という調査もある。
それは「女性が働きやすい風土ができていないからだ」と濱口氏は言う。
こうしたことから最近では、女性社員が入社して早い時期からリーダーシップを醸成する制度や、妊娠出産・育児などのライフイベントと重なる30代女性のキャリアを停滞させない制度の案も浮上している。
しかし「時短勤務を選択する女性社員が多いが、実際は『残業をしない』、というだけで、本質的な短時間勤務になっていない人が多い。また時短勤務でない人はフルタイムどころか残業することを受け入れるしかなく、働き方の選択肢がそれ以外にない状況。そこを改めるのが根本的な解決策です」(濱口氏)
また効率を上げて短時間でも成果を出せばきちんと評価されるように、評価や査定の仕組みも重要だ。その前提として「あなたの仕事はこれで、求められる目標はこれ」と欧米のように業務内容とミッションを明確にすることが大事だと、濱口氏は強調する。
一方、安藤氏は「時短勤務を選べば働き方が違うのだから昇進などにある程度の差が出ることは、当然のこと。短期的には、こうした状況を本人も周囲も納得して受け入れられるルールを導入すべきでしょう」と指摘する。
いずれにしても女性活用の鍵を握るのは、「評価基準の明確化」だ。
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1958年生まれ。東京大学法学部卒業後、労働省(当時)入省。欧州連合日本政府代表部一等書記官、東京大学客員教授、政策研究大学院大学教授を経て現職。
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1976年生まれ。東京大学大学院修了。政策研究大学院大学助教授などを経て現職。専門は契約理論、労働経済学。著書に『雇用社会の法と経済』など。