人財こそが企業の競争力の源泉──。ここ数年、世界のビジネスや教育機関の現場で広まっている共通認識だ。
国家行政単位で取り組まなければならないこのテーマと、日本の現状の採用育成について探ってみた。
人財のマネジメント戦略を練る上では、長期的な視点を持つことが第一義だ。「海外拠点を新たに作る、あるいは人員の空きや補充が必要になった時点で社員を研修するのでは遅い。あらかじめ、いつ海外派遣が決まっても大丈夫なように、海外派遣予備軍を用意しておき、語学の習得だけではなく、ケーススタディや体験学習なども含めた育成システムを構築することも重要です」(杉原氏)
体験型研修の重要性については、前出の石倉氏も同調する。「リーダーシップやイノベーションは実践しないと意味がありません。人財を育成するためには、どんどん海外に出したり、『異質の環境』を体験させてしまうのが一番効果的です。海外でミッションが果たせるだけの体験型の研修や海外トレーニングなど、実践の機会を増やすことが重要です」
少し前までは、せっかく海外勤務の経験があっても、その後のキャリアでその経験を活かせない人も多かった。「海外志向のある若手も増えてきているので、海外赴任はその人にとってどのようなチャンスになり、いかに成長できるのか、成功事例やロールモデルを作り、キャリアの道筋を見せることが大切です」(杉原氏)
杉原氏は、「真のグローバル化とは、誰もグローバルを意識しなくなったとき」だと言う。日本はスタートラインに立ったばかりなのかもしれない。