市場のグローバル化に伴い、外国籍社員を採用する日本企業は増加の一途をたどっている。
だが、同時に日本人社員との考え方の違いに戸惑うケースも増えている。
外国籍社員が力を発揮できる職場環境づくりのテクニックを小平氏に聞いた。
グローバル人材戦略研究所 所長 小平 達也 氏
日本企業が採用する外国籍社員数は増加しており、その数は国内で10万人を超える。だが、グローバル人材戦略研究所の小平達也所長は、「企業観、キャリア観、コミュニケーション手法など、日本人との考え方の違いやギャップはより顕在化してきています」という。
「外国人を採用した企業の現場では、時間の捉え方やアポの取り方、書類作成方法など日本流の仕事の進め方を教え、懸命に外国籍社員と信頼関係を作ろうとします。ですが、その過程で外国人を日本的な思考ややり方にはめて“日本人化”しようとするケースが多い。優秀な外国人であればあるほど、『私は日本人になるためにこの会社に来たんじゃない』と感じ、早期離職につながってしまいます」
日本人化ではなく、外国籍社員に自社の価値観や業務プロセスを理解してもらう“自社人化”が大切だと小平氏は話す。
「日本企業は企業ロイヤリティの高い同質的な集団を形成してきたので、同調圧力が強い。しかし、企業のグローバル化に同調は必要でしょうか。企業が目指すビジョン、目標の達成に向けて、一人ひとりが役割を果たすよう働きかける『協調』を促すべきなのです」
では、日本人社員と外国籍社員が協調して動く組織になるために、人事や上司はどのように働きかけるべきなのか。例えば、外国籍社員との対話にはこんな点に留意すべきだと小平氏は指摘する。
「日本企業なのだから、無理に英語で話す必要はありません。しかし、主語を明確にする、婉曲表現は使わない、カタカナ英語は使わないなどの配慮は必要です」
具体的には、「そこに掛けてもらっていいかな?」といった相手に委ねるような言い方では、意図は伝わらない。この場合は、「そこに掛けてください」と言うべきだ。「急がないけど、早めに頼むよ」といった仕事の頼み方もNG。「この書類を○日の○時までに提出するように」とはっきり伝えたほうがいい。
また、外国籍社員は一般的に自分の仕事に対する「評価やフィードバック」を求める傾向が強い。ところが、このフィードバックが苦手な日本人上司が多い。
「フィードバックをほめ言葉、あるいは叱り言葉と混同している人が散見されますが、それは違います。正しいフィードバックとは、①職場で求められる行動規範に対して、なぜその行動が良い(悪い)のか、②その理由はなぜか、③今後どのように対応するのが望ましいのか、を明確に示すことなのです」
最後に、小平氏は外国籍社員を束ねるマネージャーには「自分のマネジメントの持論、ポリシーを持つこと」の重要性を説く。
「外国籍社員はよく上司に『あなたはどのようなスタンスでマネジメントしているのですか?』といった質問をします。そのときに、明確な返答ができなければ、忠義心を持つ上司に値しないと判断されてしまいます」
といっても、難しく考える必要はない。「自分がマネジメントする上で大切にしている要素を5つくらいピックアップし、それらのキーワードを伝えることで、納得できる持論になります」
重要なのは、多様性を受け入れる心と、その心を示す明確な行動なのだ。