2006年から外国人の新卒採用を開始し、現在は300人弱の外国籍社員が働く富士通。同社では外国籍社員が能力を最大限に発揮できる環境作りに取り組んでいる。その施策の1つが、07年から始めた「Integr8(インテグレイト)」という外国籍社員支援プログラムだ。立ち上げから現在までの変遷について、同社の大平将一氏はこう語る。
「発足当初は、外国籍社員に日本での生活について解説したり、出張や年次休暇の申請手続きを英語マニュアルで提供するなど人事的なサポート体制の整備などを行っていました。今では、外国籍社員のバックグラウンドに応じて、異なる課題や解決策を検討するためのイベントを実施するコミュニティを用意するなど、グローバルに富士通の職場を“インテグレイト(統合)”することに注力しています」
外国籍社員との座談会を開催したときは、「外国籍社員同士で部門間の壁を超えたネットワークを必要としていることが分かった」(大平氏)と言う。そこでセミナーやイベントといったネットワーク構築の「場」を提供しながら「Integr8 Community」というコミュニティを日本人を含めて拡大組成。そのコミュニティの活動を人事部員を含むコアメンバーがサポートする体制を整えた。「たとえば日本流の会議のやり方が理解できない、キャリアに対する価値観が上司と違うといった悩みを外国籍社員が人事へ共有。その声を人事から現場にフィードバックすることで、双方の齟齬を減らすことに役立てています」(大平氏)
一方で外国籍社員を自然に受け入れる組織を目指し、受け入れ部署の上司を集め、ディスカッション形式のセミナーも開催。「一口に外国籍社員といっても、日本人と区別せずに同じように扱ってほしいと要望する人と、外国人としての強みを生かす働き方を求める人がいる。まずは、自分の部下のキャリアに対する考え方を知ることがマネジメントの上で重要だが、踏み込んだ会話ができていないなど、課題を共有し解決策を議論することができました」(人事本部、白石昇平氏)
こうした座談会に加え、経営者と対話するイベントなどを開催。時にはインフォーマルな懇親会を行うことで、外国籍社員が「もっと部署間を超えたネットワークが欲しい」という要望にも応えている。
こうした施策の効果は確実に出ているようだ。大平氏によると「もちろんさまざまな課題はあるものの従業員満足度調査を行ったところ、外国籍社員の満足度は相対的に高く、組織運営やマネジメントに対する信頼が高いという結果を得ることができた」と言う。まさに「チーム」による外国籍社員の育成を、人事部がサポートした好例だろう。
富士通はこうしたグローバル化推進プロジェクトに加えて、将来的には“本丸”である、全世界で約17万人に達する富士通の人財の“インテグレイト”も視野に入れる。「まずは全世界のマネージャー以上のジョブの格付けを行い、グレードの標準化を行う予定です」(大平氏)。これにより海外拠点採用の外国籍社員も本社で活躍したり、あるいは本社勤務の社員が海外拠点に出向するといった人事が加速することが想定される。となれば外国籍社員を受け入れる部署が限られるといった事態は解消され、彼らのモチベーションはより高まることが予想される。富士通という巨大なチーム全体で外国籍社員を育成する──そんな日も近そうだ。