安倍政権も推進するテレワーカー人口の増加。
在宅型テレワーク、モバイルワーク(モバイル型テレワーク)など、オフィスに捉われない柔軟な働き方は、ワークライフバランスとダイバーシティを推進する一方、なかなか定着しないのが現状だ。
テレワーク導入に立ちはだかる壁と、その打開策を探った。
このように、環境が整っているにも関わらず、テレワークを実行するのは難しいのが実態だ。では打開策はどうすれば見えてくるのか──。
「今年、消費者庁が全管理職に週1日の終日在宅勤務をする実験を始めましたが、同庁のようにまずは管理職が実際にやってみることです。そうすれば、さまざまな障壁が見えてくる。そして、その問題点を明確にし、障壁をなくす働き方をみんなで議論しながら模索することが第一歩となるでしょう。たとえば裁量労働制なのに遅刻は厳禁ということがあるかもしれない。このような不自然な働き方を、一つずつ潰していく先に、テレワーク普及の現実味が見えてくると思います」(濱口氏)
欧米では個室からメールと文書で指示を出すのが管理職というイメージだが、日本では部下に睨みを利かせる存在。
「この管理職のイメージを変えることで本格的な普及につながるのでは」と濱口氏は語る。一方、柳原氏はオンラインコミュニケーションのスキルという面から次のように解決策を提示する。
「みんなで一緒にいるという臨場感や安心感が大事になっていると思いますが、その感覚はオンラインコミュニケーション(メールや社内掲示板など)でも実現可能なのです。たとえばSNSでよく話している間柄の人とは毎日会っているような感覚になります。また、ある大手企業では余計なメールが多いと大事なメールが埋もれるため、社内SNSの日記機能を活用。そこに自分の状況や伝えたいことを書くと、部門の人が見てアドバイスをくれたりする。このような掲示板をうまく活用することも有用です。ただメールや掲示板でうまく言いたいことを伝えられる人はまだ少数派なのが現状です」
また柳原氏は「会社なのか自宅なのかという二元論に陥ってしまう」ことの弊害も指摘する。
「会社も自宅も一長一短。本質は働き方と働く場所の多様性や個性を認め、実践していくことです。仕事の内容や人によって、生産性を上げる方法や場所は異なるはず。今日は午後から所用があり有休を取得するため、午前は在宅勤務をしたいという人を上司は信頼し認めてあげることも大切です」
このように管理職の意識の問題も大きいといえそうだ。では実際にテレワークを制度化するというトップの判断が下ったら、担当者はどうすればよいのか。「まずは管理職にそのメリットをよく伝えて説得し、週1回でいいので管理職から始めてもらい、意識改革を促すこと。また一人ひとり丁寧に聞いていくと、介護の必要性などから興味のある人が必ずいるもの。そういう人から徐々に始めてもらうのがいいのではないでしょうか」(柳原氏)