テレワークコンサルティングを行う田澤由利氏に導入の際の具体的な解決法を聞いた。
在宅型テレワークの導入には、マネジメントやセキュリティ面など課題が多く、対面でのコミュニケーションが少ないなど導入をためらう理由は枚挙にいとまがない(図4)。
だが、解決方法はあると田澤由利氏は強調する。
「スタッフの在席状況を画面で確認でき、いつでも話しかけられるツールを導入すれば、在宅勤務者の労務管理もできます。労務状況も自己申告でなくシステムで『見える化』すれば、会社勤務と同じ緊張感が保てるのです」
「そもそも在宅でできる仕事が少ない」と考える人事担当者もいるが、田澤氏は「在宅の仕事は資料作成やデータ分析など一部の作業に限られると思われがちだが、それは誤解」と指摘。資料をデータ化してクラウドで共有すれば、多くの仕事を在宅でできるようになり、テレビ会議やネットツールを導入すれば打ち合わせにも参加できる。
「在宅型テレワークの導入は無理」と考えている担当者に田澤氏が勧めるのは、現在の仕事内容を可視化し、ITを有効活用すること。「提案営業の場合、顧客訪問を除く情報収集、打ち合わせ、資料・報告書作成と、全業務の約8割が在宅で対応できるようになります」
社員に限らず、企業へのメリットも大きい。「業務がクラウド化されれば、知識・情報を全社員で共有できます。有能な社員の離職を防げば、採用・教育コストも抑えられ、会社の生産性・競争力も向上します」
ただ、テレワークを導入して定着させるには、制度の整備や研修の開催など社員の理解を深める施策も必要だ。田澤氏は、図5のような手順による導入を勧めている。
はじめに「ワークライフバランスの実現」や「BCP(事業継続計画)対策」などといったテレワークの導入目的をしっかり定め、それに向かってさまざまな準備を行う。そのうえで、まずは要育児・介護者などに対象を絞り週1回など無理のないトライアルから始め、徐々に規模を拡大し、最終的には目的通り全社員がテレワークを実施できるようにする。このようなステップをしっかり踏んでいくことで、テレワーク導入が無理なく現実的に見えてくるのではないだろうか。
profile
1962年生まれ。上智大学卒。シャープに入社し商品企画などを担当。出産と夫の転勤でやむなく退職するも、1998年にワイズスタッフを、2008年テレワークマネジメントを設立。著書に『在宅勤務が会社を救う』(東洋経済新報社)など。