インターンシップの適切な運用について模索している企業は多い。企業と学生の双方に負担が少なく有意義なインターンシップとは、どのようなものか。学生の就職活動を支援してきた上田晶美氏に聞いた。
経団連の指針見直しによる就職活動期間の短縮化を受け、採用活動の手段としてインターンシップが注目されています。一方で、経団連はインターンシップは就業体験であり、採用選考活動は無関係としているため、どのように採用に活かすべきか悩んでいる企業も多いようです。今必要なのは、インターンシップと採用活動を、"適切かつ緩やかに結びつける"工夫です。
最初に、人事部は次年度の新卒採用を見据えたインターンシップの実施を全社に周知させましょう。目的を明確にすれば社内の協力が得やすくなり、対象とすべき学生や実施すべきプログラムもおのずと見えてくるからです。
インターンシップに多数の応募があるのはうれしいことです。しかし、採用実績のない大学や、自社の業務とほぼ無縁の学部の学生ばかりでは、インターンシップ後に自社にエントリーする可能性は低いでしょう。求める人物像を明確にし、参加者についても、採用実績のある大学を中心に、学内の就職課を通じて学部を絞って募集した方が効果的です。
最近は「会社説明会型」のワンデーインターンシップが人気ですが、学生との濃密な交流には、「職務実践型・課題解決型」が最適です。5日程度の実施日数で、営業随行などの実務体験や、自社の業務に関するグループワークを行うと良いでしょう。実務体験ではスケジュール管理能力、グループワークでは初対面の相手とのチームワークなど、面接や試験では測りにくい学生の能力がわかります。学生にとっても、自分の資質に気づくきっかけとなります。
また、インターンシップを「1回だけのイベント」で終わらせるのではなく、参加者たちと継続的に交流し、その後の採用の流れに結びつけていくことが大切です。例えば、夏に大学3年生向けにインターンシップを実施したら、参加者を対象に、翌年3月までにワンデーインターンシップや面談会を開き、継続性を持たせます。特に、若手社員との面談は学生に大変好評です。先輩たちの生の声を聞くことで、自分のキャリアプランをより具体的にイメージできるからです。
インターンシップにおいて、プログラム以上に大切なのが、学生の悩みや不安に寄り添うこと。素直でナイーブな学生も多いので、「人事の方が親身に就職の相談に乗ってくれた」という理由で、その会社を第一志望に決めるケースが少なくありません。「君は◯◯の資質がある」と、自己分析に役立つフィードバックを行うのも効果的です。
優秀だけれども面接が苦手な学生も珍しくありません。面接ではわかりにくい、彼らの長所を発見できるのも、インターンシップのメリットです。半面、社員の負担を懸念する声もあるので、実施前に担当部署と人事部の綿密なコミュニケーションが必要です。できれば、インターンシップに協力した社員には、人事考課でプラスとなる仕組みを整えることが望ましいです。
フレッシュな学生との交流は、社員にも刺激となり、自分の仕事を見つめ直す機会になります。こうしたインターンシップのプラス面への認識を、企業全体で共有することが重要です。
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キャリアディベロップメントアドバイザー。就職、転職に関する講演、執筆を手がける。主な著書に『知っておきたい会社のジョーシキ』(技術評論社)、『ハナマル式就活のすべて』(学習研究社)など多数。