組織 人財 これからのリーダーシップとともに欠かせないフォロワーシップの磨き方 マネジメント、リーダーシップ、フォロワーシップの違いとは

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2019.08.05

マネジメント能力とリーダーシップだけではなく、リーダーを自発的に支援する「フォロワーシップ」の重要性が高まっている。
今、なぜ注目されているのか、どのように磨けばいいのか。エグゼクティブ人財の育成やフォロワーシップ研修を実施する株式会社エム・シー・ジー代表の久野正人氏に聞いた。

リーダーシップだけでは、真のリーダーにはなれない。高まるフォロワーシップの重要性

今までのトップダウン型の組織では、マネジメント能力とリーダーシップがリーダーに必要なスキルセットだとされてきた。だが、近年、働き方改革などにより求められている組織の生産性においては、先の2つ以外に「フォロワーシップ」の重要性が高まってきている。

約20年間外資系企業に従事し、早くからフォロワーシップに着目し、日本企業へのコーチングと研修を実施している久野正人氏によると、フォロワーシップとは、「上司などの意思決定者の目線に立って、自発的に行動できる態度のこと」だという。

「現場でのマネジメント能力が高く、リーダーシップを発揮していて、メンバーからの信頼が厚いリーダーであっても、自分の上司などの意思決定者に対して"指示待ち"の受け身な態度ではNG。この変化の激しいVUCA時代にはリーダーの能力が低いと判断されるでしょう。リーダーには、組織の課題解決に向けた素早く、かつ適切な意思決定と行動が急務だからです」

課題に直面したときに、リーダーに求められるのは、上司などの意思決定者に対して意見を通せる説得力と実行力だ。フォロワーシップを兼ね備えたリーダーであれば、意思決定者と普段から良好な関係を築いているため、迅速に課題を解決できるのだという。

「とはいえ、日本企業では、まだフォロワーシップの重要性が広く認識されているとはいえません。マネジメントとリーダーシップの違いですら、曖昧な人がいます」

図1にまとめたように、目の前の課題を効率的に解決するのがマネジメント能力、未来を予測して新しい世界をつくり出すのがリーダーシップ、その2つを実現するために意思決定者を動かしていくのがフォローワーシップだと説く久野氏。まずは、3つの違いをきちんと認識することが重要だと強調する。

図1 3つの役割の違い

  マネジメント リーダーシップ フォロワー シップ
指針  目の前の課題解決  未来創造  意思決定者操縦
行動  目の前の課題を分析し効率的に解決する  未来を予測して新しい世界をつくり出す  意思決定者を自発的に支援し説得する
キーワード  組織の安定性と持続性  創造と変革  支援と説得
求められる状況  安定的・持続的に運営する状況  変化が著しい・予測困難な状況  意思決定者を巻き込むすべての状況

 

プロジェクト型業務に必須な"ノウハウ・マネジャー "

外資系企業では、日本でいう部・課長などの管理職(ポジション・マネジャー)のほかに、マーケター、研究者、システムエンジニア、プロジェクトマネジャーなどのスペシャリストが、チームリーダーを担うケースが多い。そのほうが、的確で迅速な意思決定ができて効率的だからだ。

こうしたスペシャリストを"ノウハウ・マネジャー"(図2参照)と称する久野氏は、今後日本でも仕事がプロジェクト化されていくため、ノウハウ・マネージャーの重要性が増していくと説く。

「チームリーダーを担うノウハウ・マネジャーは、専門性だけではなくマネジメント能力、リーダーシップ、フォロワーシップが求められます。特に、今まで多くの人が学んでこなかったフォロワーシップは、意識的に磨き続けるよう心がけるといいでしょう(図3参照)」

図3 フォロワーシップを磨き続けるための3つの習慣

1・顧客と同じように提案する
上司であろうと顧客であろうと、意思決定者のニーズや気持ちを考えて提案すれば、あなたのアイデアが採用される確率は上がってくる。
2・ROI(費用対効果)で説得する
自分の提案を常に数値化してみると、提案内容の甘さに気づくものだ。優れたフォロワーは、冷静に数値的観点(Hard Benefit)から物事を俯瞰でき、数字で説得力を持たせる。
3・意思決定者も人間である
最良の意思決定者であっても人間である。人間以上の神ではない。上司も完璧ではない。上司の足りない部分は批判するよりも手助けしよう。

Profile

久野正人氏
株式会社エム・シー・ジー代表取締役
一般社団法人久野塾代表理事 塾長
ビジネスコーチ株式会社 統括パートナーエグゼクティブコーチ

慶應義塾大学法学部卒業。古河電気工業株式会社入社。日本サン・マイクロシステムズ、日本シリコングラフィックスを経て、ベックマン・コールター株式会社入社。
事業部長を経て、代表取締役社長就任。2011年末で同社を退社。12年1月からプロのエグゼクティブコーチとして独立。
7年半で360名の社長、役員、次世代リーダーへのコーチングの実績を持つ。中高生から30代の逸材育成を目的とした一般社団法人久野塾の代表理事塾長でもある。
監訳書に『リーダーシップ・マスター』(英治出版)、著書に『ノウハウ・マネジャーの教科書』(クロスメディア・パブリッシング)がある。