働き方 仕事の未来 組織 企業側の環境整備も重要にエンゲージメントにもつながる キーワードで見る2022年の雇用・労働③ リスキリング

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2022.03.08

新たな変異ウイルス「オミクロン型」の感染が急増するなど、コロナ禍の先行きはまだ予断を許さないものの、2022年の世界経済は本格的な回復軌道に向かうと見られる。
デジタル化とグローバル化に加え、カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向けた世界的な潮流が産業構造を大きく変えつつあり、企業には引き続きビジネスモデルの転換やイノベーション創出が求められていく。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)やGX(グリーン・トランスフォーメーション)を支えるような人財の獲得・育成もますます重要になるだろう。
テレワークをはじめ、コロナ禍での働き方の変化を、生産性向上につなげる発想も欠かせない。個人にとっては、ビジネス環境が大きく変わるなかで、ライフキャリアを自律的に形成していく姿勢がますます求められる。
こうした状況を踏まえ、企業と個人が2022年を生き抜くうえでヒントになるような雇用・労働のキーワードについて、専門家に語っていただいた。

ネクストノーマルに向けて、あらゆる企業がビジネスモデルの転換や新たな事業創造に取り組むなかで、引き続き「リスキリング」も重要なキーワードだ。「学び直し」と訳されることが多いが、リスキリングの対象は「学び一般」ではなく、環境変化に対応し、より付加価値の高い仕事へシフトしていけるような「具体的なビジネススキルの習得」を指すことが多い。働く個人にとってリスキリングが大切なのはいうまでもないが、企業側もそのための環境を積極的に整えていく姿勢が欠かせない。

「コロナ禍以降、テレワークの常態化や副業・複業の解禁、ジョブ型雇用へのシフトなどにより、企業・組織に対する“遠心力”が働き、社員のエンゲージメントが低下するという課題が生まれています。企業としては、以前の状態に戻そうとするのではなく、社員に対する新しい求心力を生み出す工夫が必要です。その重要な手段の1つがリスキリングをはじめとする人財育成の強化です」(山田氏)

これまで日本企業は、人財育成の手段としてOJTを重視してきたが、自社のビジネスモデルの転換に対応できるようなスキルをOJTによって習得することはできない。今後は大学なども含めて、外部機関を活用した人財育成の取り組みが必要になる。「外部機関での学びについて、以前から『リカレント教育』などの言葉が声高にうたわれていましたが、日本ではあまり目立った成果は出ていません。これは社員たちが企業外で学んできたスキルや知見を、企業があまり評価してこなかったことが大きいと思います。今後、本気で人財育成に取り組むなら、企業自身の意識改革が最も重要でしょう」(濱口氏)

Profile

山田久氏
日本総合研究所 副理事長

京都大学経済学部卒業後、1987年に住友銀行(現・三井住友銀行)入行。経済調査部、日本経済研究センター出向を経て、1993年に日本総合研究所調査部出向。調査部長兼チーフエコノミストなどを経て2019年より現職。2015年、京都大学博士(経済学)。著書に『賃上げ立国論』(日本経済新聞出版)など多数。

山田久氏

濱口桂一郎氏
独立行政法人労働政策研究・研修機構労働政策研究所長

東京大学法学部卒業。労働省(現厚生労働省)入省。
東京大学大学院法学政治学研究科附属比較法政国際センター客員教授、政策研究大学院大学教授などを経て現職。専門は労働法政策。近著に『働き方改革の世界史』(筑摩書房)。

濱口桂一郎氏