山田久氏
日本総合研究所 副理事長
京都大学経済学部卒業後、1987年に住友銀行(現・三井住友銀行)入行。経済調査部、日本経済研究センター出向を経て、1993年に日本総合研究所調査部出向。調査部長兼チーフエコノミストなどを経て2019年より現職。2015年、京都大学博士(経済学)。著書に『賃上げ立国論』(日本経済新聞出版社)など多数。
コロナ禍は社会の価値観を大きく変えたといわれる。SDGs(持続可能な開発目標)の世界的な潮流にはどんな影響を及ぼしたのか。
「これまでは、SDGsのような社会課題への取り組みに熱心なのは、業績に余裕のある企業が中心で、経営環境が悪化すればSDGsも沈静化するだろうという意見もあった。しかし実際はそうではなかった。コロナ禍を機に、関心は世界的に高まっています」(山田氏)
環境問題はまさにその象徴だ。ウイルス感染症のパンデミックが発生する底流には、自然破壊に伴って人類と野生生物の接触機会が増えていることなどが一因と考えられ、対応が迫られる。
「さらに世界各国で注目されたのは格差問題です。コロナ禍で飢餓人口が増えるなど、貧富の格差が生命の差につながったという指摘もあり、主要な国際機関が警鐘を鳴らしています。10年ほど前から、株主価値のみを追求するのではなく、あらゆるステークホルダー全体の価値向上を考えるべきだという考え方が広がっていました。IMFやOECDが掲げているのは『インクルーシブ・グロース(包摂的成長)』。取り残される人をなくし、全世界が包括的に成長することを目指すべきという理念です。コロナ禍は結果的にこうした価値観への変化を加速させたと考えられます」(山田氏)
機関投資家たちも、投資の判断基準にSDGsへの取り組みを積極的に組み入れており、社会課題へ配慮しない企業は今後選ばれなくなる可能性が高い。
「金融市場だけではありません。特に若い世代の社会的課題への関心は高く、ブランド戦略や採用戦略でもSDGsは重みを増していくでしょう。コロナ禍がそのトレンドを一段と加速したのだと捉えています」(山田氏)
山田久氏
日本総合研究所 副理事長
京都大学経済学部卒業後、1987年に住友銀行(現・三井住友銀行)入行。経済調査部、日本経済研究センター出向を経て、1993年に日本総合研究所調査部出向。調査部長兼チーフエコノミストなどを経て2019年より現職。2015年、京都大学博士(経済学)。著書に『賃上げ立国論』(日本経済新聞出版社)など多数。