働き方 仕事の未来 人財 「最低賃金の上昇」が大きな契機にキーワードで見る2023年の雇用・労働②同一労働同一賃金

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2023.03.10

新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われて丸3年が経過した。2023年に入って再び新規感染者数が過去最多を記録するなど、まだまだ収束が見通せない。加えて世界経済は分断を深め、先行き不透明な状態が続く。日本国内では物価高に加え、人手不足も大きな課題だ。これらを乗り越え、デジタル化や脱炭素などの大きな潮流に対応していくことが求められている。
同時に働き手の力を最大限に発揮させることが欠かせない。今後、経済活動が回復軌道に向かうなかで、日本型雇用の見直し、シニア層の雇用促進、外国人労働者の受け入れ拡大、フリーランスの保護など、これまで働き方改革の文脈で語られてきたテーマが再び活発に議論されていくことになりそうだ。
2023年の雇用・労働の動向を、キーワード別に専門家に語っていただいた。

働き方改革の議論のなかで、長時間労働是正と並んで大きなテーマとされてきたのが、非正規雇用労働者と正社員との不合理な待遇差を是正する取り組みである「同一労働同一賃金」だった。

「今の政権も非正規の待遇改善を重要な施策として位置づけていますが、あまり浸透していないのが現状かと思います」(濱口氏)

しかし2022年以降、別の角度から、非正規雇用労働者の待遇改善が急速に進展していると濱口氏は指摘する。それが最低賃金の上昇だ。2002年度に663円だった最低賃金の全国平均は、21年度には930円に引き上げられた。東京都の最低賃金は22年10月には1072円となった。

「最低賃金が上がれば、さまざまな非正規雇用労働者の賃金水準が波及的に高まります。その結果、時給換算した正社員の給与が、非正規とあまり差がなくなってきました。働く側の意識も変わるでしょうし、企業側としてもこのインパクトは大きい。正社員と非正規の待遇をどのように整理するか、改めて考えていく必要があるでしょう」(濱口氏)

Profile

濱口桂一郎氏
独立行政法人労働政策研究・研修機構 労働政策研究所長

東京大学法学部卒業。労働省(現・厚生労働省)入省。東京大学大学院法学政治学研究科附属比較法政国際センター客員教授、政策研究大学院大学教授などを経て現職。専門は労働法政策。近著に『働き方改革の世界史』(筑摩書房)。

濱口桂一郎氏